福島第1原発重大局面 「最悪のメルトダウン」で何が起こるのか

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   東京電力福島第1原発の2号機で爆発が起こった問題で、「再臨界」の危険性が指摘され始めた。メディアからは、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故になぞらえる報道も出てきている。実際は、何が起こるリスクがあるのか。

   2号機では2011年3月15日早朝、大きな爆発音があり、原子炉建屋の損傷が確認された。「最後の砦」でもある、原子炉格納容器の一部である圧力抑制室(サプレッションプール)も一部損傷したものと見られている。

再臨界の危険性が指摘される

   この2号機をめぐっては、14日には原子炉格納器で燃料棒がすべて露出し、一時期は「空だき」状態に陥った。この時点で、核燃料の大半が解けるメルトダウン(炉心溶融)についても、東電は「否定できない」としていた。

   溶け出した燃料が圧力容器の下部にたまると、再び核分裂が連続して起きる「再臨界」が起こる可能性もある。この状態になると、制御がさらに難しくなる。

   例えば、反原発の立場を取る「原子力資料情報室」が3月15日に発表した声明では、

「今後も、炉水位の低下及び格納容器の損傷によって、さらに多量の放射性物質が放出される可能性がある」

と警告。同情報室が開いた会見でも、東芝で原子炉格納容器の設計をしていた後藤政志氏は、

「(溶けた核燃料が、格納容器に)落ちているときには横に広がるので、その形状で再臨界の起こりやすさが変わってくる。ある一定の規模があると、再臨界の危険性が出てくるのは間違いない」

と指摘した。

「チェルノブイリ型までにはいかないだろう」

と見るのは、かつて日立製作所で高速増殖炉の設計に携わっていた経済評論家の大前研一氏だ。大前氏は、3月13日にユーチューブ上で公開された動画の中で、

「炉心がメルトダウンする可能性はゼロではないが、仮にそれが起こっても、中の圧力容器じゃなくて(圧力容器の外側にある)格納容器の方に十分な(ホウ酸入りの)水が入っていて、そこに(溶けた核燃料が)落っこちてきた時には、多分それで止まる」

と述べた、

膨大な量の放射性物質が放出されるのか

   国外のメディアを見ても、今後のリスクの評価は、様々だ。

   ニューヨーク・タイムズ紙のウェブサイトでは、メルトダウンが起こる様子をイラスト入りで詳しく紹介。その中で、「最悪のケース」として、

「溶けた燃料が全ての骨組みを破壊し、膨大な量の放射性物質が放出される。だが、物理学者は、これが起こりうるかどうかについて疑問符を付けている」

としている。

   また、英ファイナンシャル・タイムズ紙のブログによると、チェルノブイリ事故について欧州委員会に助言したこともある原子力物理学者のシャン・ナイアー氏は、同紙に対して

「チェルノブイリほど悪くはない」

と発言。だが、状況はきわめて深刻で、最悪の場合広範囲に放射能汚染が起こる可能性を警告した。さらに、

「未知の領域だ。今まで、この種のシナリオは、コンピューター上でシミューレションしたに過ぎない」

とも指摘している。

   また、AFP通信によると、フランス核安全局(ASN)のラコスト局長は、2号機の爆発が確認される前の3月14日の時点で、福島原発の事故について

「(事故評価尺度で)レベル5を上回り、おそらくレベル6に当たる感覚」

と発言。チェルノブイリ事故は、最も重いレベル7(深刻な事故)。実際にメルトダウンにまで発展した1979年の米スリーマイル島原発事故は、レベル5(施設外へのリスクを伴う事故)だと分類されている。つまり、「スリーマイル以上、チェルノブイリ未満」という評価だ。

   なお、1986年に起こったチェルノブイリ事故では、旧ソ連当局は原発の半径30キロ圏内の住民約12万人を強制避難させ、これまでの計約40万人が疎開したとされる。死者数は4000人にのぼると推計されている。

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