東京外国為替市場のドル円相場は2011年3月15日、1ドル81円台後半で82円をにらんで推移している。
3月11日午後に起こった東北関東大震災を受けて、週明けの14日は72銭円高(11日17時比較)の1ドル82円前半と円高ドル安にふれた。国内企業が外貨資産を円に換える動きが高まるとの思惑が働いたが、一方で日銀が追加の金融緩和策を発表したことでやや円安に戻すなど、1ドル82円台をにらんで「綱引き」が続いている。
82円台をにらんで一進一退
1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災。このときのドル円相場は1ドル98円前後で推移。第一生命経済研究所・主席エコノミストの嶌峰義清氏は「当時、直後は円安ぎみに動いた」と振り返る。しかし、日本経済への影響は軽微とみて、円はその後ジワジワ上昇して3か月後の4月には79円85銭を付けた。
2011年3月11日の地震発生直後は、国内経済への打撃を懸念した円売りが殺到。ドル円相場は一時1ドル83円29銭まで円安にふれたが、週明けの14日には前日比(11日17時)1円28銭円高の1ドル80円60銭まで円が上昇。4か月ぶりの円高水準を付けた。
翌15日には相場が乱高下して81円22銭近くまで上昇したが、政府・日銀による円売り介入への警戒感を高まって円売り・ドル買いが進み、わずか数分後に82円台に戻すなど荒れた。
円高への動きは、東北関東大震災の影響で国内企業や個人投資家が手元資金の確保に動いたことで、株式や外貨建て資産といったリスク資産を売却したことが原因。それもあって、ドル円相場も円高ドル安への動きを強めたというわけだ。
「過度な円高リスク小さい」
東北関東大震災が起こる前は、ようやく景気回復の兆しが見えてきたところだった。個人投資家などが積極的にリスクをとれるようになり、株式や投資信託、外貨預金などのリスク資産への投資が活発になっていて、低金利の円が売られやすい環境にあった。
一方で、もともと決算月である3月は国内企業が円の確保に動くので円高にふれやすい。こうしたバランスの中で震災が起こった。
第一生命経済研究所の嶌峰義清氏は現状を、「アジアなどを含めた株価の下落に加えて、原油価格も急落していることをみると、世界的にリスク資産から資金が逃げ出している。いまは円が上昇しているというよりも、高金利通貨が売られているとみてよい。乱高下しているのは、そういった需給の動きがハデに表れているため」と話す。
こうした相場の混乱は震災や原発問題が沈静化するまでは続きそうだが、このまま阪神・淡路大震災時のような円高シナリオになるかといえば、そうは言い切れないらしい。
島峰氏は「過度な円高リスクは小さい」とみている。
震災や原発問題が日本経済にさらに深刻な影響を及ぼすことになれば、海外投資家の円売りが進行するためだ。