今度は4号機。東京電力の福島第1原発(福島県)では極めて深刻かつ厳しい状況が拡大中だ。巨大地震発生時に稼働中だった1、2、3号機での燃料棒冷却問題に加え、定期検査のため停止中だった4号機で爆発が起き、火災も発生した。さらには、同じく検査停止中だった5号機と6号機も「温度上昇中」という。何が起きているのか。
経済産業省の原子力安全・保安院の発表などによると、2011年3月15日6時ごろ、福島第1原発の4号機周辺で大きな爆発音がした。原子炉格納容器などを覆う形の建屋の屋根に損傷が見つかった。さらに9時40分ごろには建屋4階付近で火災が発生、正午前後までには鎮火状態になったという。
電力断たれ冷却水循環できず
ショックなのは、3月14日までの「福島第1原発危機」報道の中では、ほとんど表に出てきていなかった、地震発生時には検査のため停止中だった4号機で深刻な事態が起きたことだ。
すでに水素爆発で建屋上部が吹き飛んだ1号機と3号機、15日早朝に大きな爆発で圧力抑制室が損傷したとみられる2号機は、いずれも地震発生時に稼働中で、自動停止後も高い熱をもった燃料棒をいかに冷やすかという問題を抱えていた。
「想定を大きく超えた」(東電)津波の影響で、非常用発電機も作動せず電力確保に大きな問題が生じたため、冷却用の水を送り込むことが困難となったことから数々のトラブルが生ずる結果となった。
しかし、電力確保の問題が影響を与えたのは、地震時稼働中の1~3号機だけではなかった。検査停止中の4号機では、建屋5階にある水を循環させたプールで原子炉から取りだした使用済み核燃料を冷やしていた。しかし、地震後電力供給に問題が生じて水を循環できなくなっていた。このため、蒸発により水が減り、使用済核燃料の上部が水面から出て、水素が発生し、爆発につながった可能性が考えられている。直前まで稼働中だった燃料棒に比べ、もっている熱ははるかに小さいはずだが問題は起きた。
「身体に影響を及ぼす可能性のある数値」
ということは、ほかに検査停止中だった5号機と6号機も気になるところだ。福島第1原発には1号機から6号機まである。3月15日夕の会見で、枝野幸男官房長官は、5号機と6号機について「温度が若干上昇している」と発表した。詳細な説明はなかったが、4号機と同じく、使用済核燃料を冷やしているプールに関しての発言とみられている。4号機と同じ状況につながりかねない予兆である可能性もある。
さらに4号機のような、使用済核燃料プールでの事故が深刻なのは、1~3号機の場合のように問題となる燃料棒が圧力容器、さらには格納容器と2重に防御されている、という状態ではないことだ。基本的には使用済核燃料プールは、一番外側の覆いである建屋だけに守られているといっても良い形だ。そして4号機はその建屋の屋根付近が損傷している。
また、1~3号機にも使用済み核燃料は保管されており、読売新聞の夕刊(3月15日付)によると、約300~500体あるという。事態の推移によっては、1~3号機でも同じ事態が発生する可能性もある。
東電などによると3月15日10時20分ごろ、3号機付近で毎時400ミリ・シーベルトを記録した。一般人の年間被ばく限度の400倍にあたる高い数字だ。枝野長官は会見で、「身体に影響を及ぼす可能性のある数値」と述べた。