世界の鉄道事業は「ビッグ3」の寡占状態
とはいえ、海外での鉄道事業拡大を成長の柱とする日立としては、今後の展開に向けた布石にはなる。世界の鉄道事業はカナダのボンバルディア、ドイツのシーメンス、フランスのアルストムの「ビッグ3」の寡占状態にある。鉄道発祥の地である英国の大型案件で、ビッグ3を押しのけて受注を獲得した実績は「次」に向けて大きなアピール材料になり得る。日立は英北部ダラム州に車両生産工場を建設し、欧州市場の開拓に注力する構えだ。
ちなみに、今回の日立の受注は、最近流行の官民一体による原発や新幹線などの「インフラ輸出」とはやや毛色が異なる。新幹線はJRグループと日本政府、車両メーカーがまさに一体となって線路の敷設から運行管理までを全体として輸出するもので、原発も同様にシステム全体の輸出だが、今回の日立は英国ゼネコンと組んでの受注で、請け負うのは車両更新と保守サービスにとどまり、日本政府もさほど力を入れた形跡はない。日立の受注が官民一体の「インフラ輸出」に弾みをつける、という論調が一部メディアで見られるが、やや的外れといえそうだ。