九州新幹線全線開業を目前に控え、博多駅(福岡市博多区)に2011年3月3日、新しい駅ビル「JR博多シティ」がオープンした。商業施設として使う商業床面積は約18万平方メートルに上り、国内の商業駅ビルでは最大級。同日には22万2000人が訪れる盛況ぶりで、経済効果への期待が高まっている。
博多シティは地上10階、地下3階建てで、延べ床面積は20万平方メートル。百貨店「博多阪急」や生活雑貨の「東急ハンズ」のほか、JR九州グループが運営する専門店街「アミュプラザ博多」を核テナントとし、1日の平均来館者数は10万人を予想。年間売上高は700億円に上る見込みだ。
九州全域から福岡に大量の買い物客が流れる
九州新幹線は3月12日に全線開業するが、九州を縦断する新幹線の誕生で、博多と熊本間は最速33分、博多と鹿児島中央間は1時間19分で結ばれる。「全線開業を機に、九州全域から福岡に大量の買い物客が流れてくる可能性は高い」と地元流通関係者。博多駅が九州の一大商業拠点に浮上する期待も高まっている。
ただ、九州全域には巨大駅ビルに対する危機感も漂う。ターミナル駅に立地する商業施設はそもそも、交通アクセスに優れているため、広域から客を呼び込む力が強い。京都や名古屋、札幌など大規模商業施設を抱えたメガ駅ビルはいずれも、集客に成功している。
一方、ターミナル駅付近にある既存の中心市街地をはじめ、沿線の地方都市に立地する百貨店などは、客が駅ビルに吸い上げられる「ストロー効果」で悪影響を受けやすい。札幌市の駅ビル開業では、駅周辺の小売業全体の売上高は5年間で約3割増えたのに対し、かつての中心市街地である大通地区は2割強も減少したという調査結果も出ている。
地方百貨店のさらなる淘汰が進む?
九州の場合も、博多シティから西約2キロにあり、「九州最大の商業地域」として認知されてきた福岡市・天神地区は懸念を強める。福岡大学の調査では、博多シティ開業に伴い、博多地区への来訪者数は36%増と大幅に増える一方、天神地区は5%減と予測。天神の年間売上高も12%落ち込むと予測している。
九州の地方都市では、大分市で1月末に「大分パルコ」が閉店し、長崎市の「博多大丸長崎店」も7月末で閉店を決めるなど、小売業全体が苦戦している。そんな中、「博多に向かう客の動きは警戒せざるを得ない」(地方百貨店)との見方は強く、主力店は相次ぎ店舗改装をするなど、客を引き止める対策に必死だ。「博多シティの誕生で、地方百貨店のさらなる淘汰(とうた)が進むかもしれない)(流通関係者)との見方も出ている。
九州新幹線全線開業で九州全体の商業地図が様変わりするとの見方が強まっている。