「これは政局だからやむを得ない」
米フロリダ州のスコット知事が2011年2月中旬、同州の高速鉄道整備のために連邦政府が計上した補助金の受け取り拒否を表明し、計画が白紙になる可能性が高まったことに対し、JR東海首脳は落胆を隠さなかった。米国市場への高速鉄道売り込みを成長戦略の軸にすえるだけに、出足でつまずいたショックは小さくない。
将来的に州の財政負担がかさむ懸念は消えない
スコット知事は2010年11月の知事選で、「小さな政府」を目指す草の根保守運動「ティーパーティー」(茶会運動)の支持を受けて当選。公共投資を重視するオバマ政権の政策批判を続けてきた。
高速鉄道計画については「建設費がかかりすぎ、利用客の見積もりも楽観的」と指摘してきた。連邦政府は同州に対し計20億5000万ドル(約1680億円)の拠出を決めていたが、同州オーランドとタンパ間84マイル(約130キロ)を結ぶ高速鉄道計画の総工費は27億ドル(約2214億円)と試算され、6億5000万ドルが不足。開業初年度の乗降客数の見込みも240万人と東海道新幹線の60分の1に過ぎず、将来的に州の財政負担がかさむ懸念は消えないというのが根拠だった。
JR東海はワシントンのロビー会社を通じて現地の状況を見守ってきた。今回の声明を受けて、同州への足掛かりはほぼ消えた形だが、山田佳臣社長は「他の地域での受注獲得を目指していく」と態勢立て直しに自信を見せた。