熊本市内のスーパーで行方不明になっていた3歳の女の子が遺体で発見された事件で、熊本県警が不明事案そのものを公表する前から、インターネットのツイッター上で、「女の子が誘拐された」として情報提供を呼びかける書き込みが行われていたことが分かった。状況次第では、報道各社に報道自粛を要請する「報道協定」の制度のあり方に再考を迫ることにもつながりかねない動きとして、今後議論を呼びそうだ。
「先程、会社へ警察の方が来られて、昨日の夜8時、(熊本市内の)清水の『ビッグザビッグエース』で3歳の女の子が誘拐されたそうです。現在捜査中みたいですので情報があればよろしくお願いします」。2011年3月4日昼過ぎ、こんな書き込みがツイッター上であり、広く転載されていった。熊本県警による事件発表より前の時間帯だ。
熊本の女児遺棄事件で情報提供呼びかけ
この女の子不明に関して情報提供を呼びかけるツイッター上の書き込みは、3月5日付の毎日新聞朝刊によると、すでに3日22時ごろに始まっていた。女の子は3日19時30分ごろ行方が分からなくなり、20時ごろに母親が110番通報していた。マスコミが不明事案発生を含めた今回の事件を「初報」の形で流し始めるのは4日夕ごろからで、NHKが4日16時30分ごろ、「女児不明 殺害供述の男逮捕へ」と伝えるなどしていた。
熊本県警は、報道各社に「報道協定」の申し入れを検討していた、と3月5日付朝刊の産経新聞が報じている。同協定は、報道されることが被害者の生命に危険を及ぼしかねない身代金目的の誘拐事件のときなどに結ばれるものとして知られる。
今回のツイッターでの不明情報提供の呼びかけの書き込みは、女の子を捜す親族関係者や捜査中の警察官から話をきいた人が、女の子を捜すのに役立つ情報はないか、と「善意」で行った可能性が考えられる。
今回の熊本市での事件はともかく、今回の書き込み騒動は、今後も行方不明情報が、警察によるマスコミへの情報提供より前にインターネット上で拡散する可能性があることをあらためて浮き彫りにした形だ。勿論、単なる行方不明事案と誘拐事件は異なる。途中で事態が変化し、「報道協定」が事後的に結ばれることもあり得る。しかし、今回のツイッターの書き込みでは、「誘拐」という言葉が独り歩きし、また、警察官による捜査の状況が、聞き込みに協力した一般人からネットに流出した形で、営利目的誘拐事件捜査の際にも同じことが起こる可能性もある。