トヨタ自動車が「スピード経営」を目指して、役員制度改革に取り組む。現在27人いる取締役を大幅に削減して、意思決定の迅速化と権限委譲を進めたい考えだ。
グローバル市場をめぐる次世代型エコカーの開発競争が激化。また、2009~2010年にかけて北米を中心に起こった大規模リコール(無料回収・修理)問題への対応で初動が遅れた反省を踏まえて、経営体制のスリム化を図る。
トヨタの役員制度改革は、2003年に一般企業の執行役員に相当する「常務役員」制度を導入して以来の大規模な見直しとなる。現行の取締役と常務役員をあわせた77人を60人前後まで減らすとみられている。
トヨタ経営陣、日産より20人以上多い
トヨタ自動車の取締役は現在、豊田章男社長ほか、会長1人、副会長2人、専務15人と2人の取締役の計27人がいる。さらに、常務役員は50人にのぼる。
かつて経営不振にあえいでいた日産自動車は仏ルノー出身のカルロス・ゴーン氏が社長に就くと、強烈なリーダーシップを発揮して大胆な経営改革を断行。経営内容も急回復してきた。
日産の経営陣はゴーン社長以下、志賀俊之COO、副社長5人、常務13人と28人の執行役員とフェロー2人の50人体制。トヨタと比べると、20人以上も少ない。
トヨタは「決定していることはない」(広報部)と繰り返すが、取締役を大幅削減するのは間違いないようだ。
悪い情報ほど経営幹部に届きにくくなる
トヨタも日産も、販売競争の主戦場はいまやアジアなどの新興国をはじめとした海外だ。米国などの大規模リコール問題で躓いた「豊田社長」体制のトヨタだが、2010年4~12月期連結決算によると、世界生産台数は前年同期比6.2%増の551万7000台で、それによる連結売上高は5.0%増の14兆3516億円。本業の儲けを示す営業利益は約8倍にあたる4221億円と、再び勢いを取り戻した。
グローバル競争に勝ち残っていくためにも、トヨタが「スピード経営」体制に移行するタイミングとしては好機といえる。
豊田章男社長は2009年6月に、11代目として就任した。創業家出身ということもあって、否応なく注目が集まったが、直後から米国での大規模リコール問題の対応に追われた。その影響で売上げが大きく落ち込むなど、いわば「最悪」の船出だった。
組織が大きくなると、悪い情報ほど経営幹部に届きにくくなる。おそらく、大規模リコール問題でそのことを痛感したのだろう。組織のスリム化による社内議論の活発化は、豊田社長の目指すところでもある。