読売新聞が「子ども向け新聞」市場に「殴り込み」をかけた。先行する毎日新聞と朝日新聞の子ども向け新聞が堅調な伸びを見せる中、間に割って入った形だ。ことは「子ども向け新聞」にとどまらず、新聞本体の部数競争に影響すると見る新聞関係者もおり、今後の展開が注目されている。
「読売KODOMO新聞」が2011年3月3日、関東1都6県で配られ始めた。タブロイド判全面カラー16ページ、週1回(木曜)の発行で、月額500円だ。小学生とその保護者を対象としている。創刊号では、日本人の安否不明者も出ているニュージーランド地震などを取り上げた。順次販売エリアを広げ、5月5日からは日本全国での販売となる。
部数減の中「子ども新聞」は堅調
「読売本紙の販売にはずみをかけようという狙いが透けて見える」。朝日新聞の秋山耿太郎社長は1月、同社新年祝賀会で読売新聞の子ども向け新聞参入の動きについて、こう分析を披露した。朝日も読売も2011年を「勝負の年と見ている」とし、両紙の競争を語る中で触れたものだ。
朝日新聞はグループ企業の朝日学生新聞社が、「朝日小学生新聞」(創刊1967年)を発行している。日刊でブランケット判8ページ、月額1720円だ。
一方、毎日新聞の「毎日小学生新聞」(創刊1936年)は、日刊タブロイド判8ページ(平日、土日は12ページ)、月額1430円となっている。
朝日新聞も毎日新聞も部数減が続く(10年7~12月平均、日本ABC協会調べ)中、子ども新聞の方は堅調だ。ABCの「新聞発行社レポート」によると、朝日小学生新聞は、09年1~6月期平均の約9万9000部と比較すると、3期連続で伸びをみせ、10年7~12月期は約11万3000部だった。
毎日小学生新聞の部数は同レポートには出て来ない。毎日新聞広告局サイトによると、10年5月現在の発行部数は17万6000部となっている。毎日新聞では、3年以上、前年同月比で伸び続けているとしている。
11年4月からは、国語の授業で「新聞の活用」を図るよう明記された小学校の新学習指導要領が実施される。このため、子ども向け新聞の重要は高まると期待する関係者は少なくない。
広告面でも「おいしい業界」
部数だけでなく、広告面でも期待感があるようだ。新聞業界の内部事情にも詳しいある男性ジャーナリストは、「子ども向け新聞は、広告の入りが良くておいしい業界」と話す。読者が「小学生とその保護者世代」とはっきりしているため、広告主が広告を出しやすいのだという。
読売は週刊で、毎日と朝日は日刊という違いはあるものの、毎日と朝日が分け合っていた市場に読売が参入することで、先行2社に影響が出るのは間違いなさそうだ。
読売新聞に、「読売KODOMO新聞」の創刊号部数などについて質問した。
読売新聞東京本社広報部によると、創刊号部数と目標部数については「先行する他社の同種媒体の部数になるべく早く追いつきたいと考えていますが、具体的な部数についてはお答えを差し控えます」とのことだった。
また、創刊の手応えについては「子どもの教育に対する保護者の皆様の関心の高さを実感しております」とした。創刊の狙いについては
「既存の子ども新聞にはない大胆なレイアウトとユニークな企画を取り入れ、子どもたちの関心に応えつつ、その成長と能力を育む『おもしろくて、ためになる』新聞を目指してまいります。これからの子どもの教育にとって、一番大事になるであろう基礎学力が、楽しく、おもしろく、そして自然に身につくような、様々な工夫が凝らされています」
と回答した。
都内のある読売新聞の販売店に3月3日昼、「読売KODOMO新聞」を1部欲しいと電話してみると、用意した部数はすべて注文がきて手元には1部も残っていない、とのことだった。千葉県内のある販売店は、店のサイトで3月2日、「申込殺到中」と紹介していた。