国際的な「安全資産」だとしてもいつか限界は来る
言うまでもなく、日本国債は95%が国内で消化され、海外保有比率が高い欧米とは際立った違いがある。1400兆円以上の個人金融資産の範囲内で、少なくとも現状では「日本国債暴落」などの兆候はなく、むしろ国際的な「安全資産」とみなされているのだ。
ただ、毎年40兆円を上回る国債発行を続けていればいつか、限界が来るはず。慶応義塾大学の土居丈朗教授はテレビなどで「2013年に国と地方の借金が国民の金融資産を上回る」と指摘している。個人金融資産は、住宅ローンなどの負債を差し引くと、実質は1000兆円。国債増発が続く一方、団塊世代のリタイヤで資産が取り崩されていくことから、2、3年で国の借金を国民が買いきれなくなるというのだ。
さらに、2011年度予算の関連法案が、「ねじれ国会」のため成立が危ぶまれ、公債特例法案もその中に含まれる。不成立なら赤字国債が発行できなくなり、歳入の半分に穴が開くことになりかねない。同法案不成立が引き金になって国債の暴落が始まるという声も市場では聞かれ始めている。
ムーディーズは国債の見通しとともに、3メガバンクの長期格付けの見通しも、「ネガティブ」とした。国債格下げになった場合の銀行経営への影響を考えた措置という。
万一、国債暴落ともなれば、大量の国債を保有する銀行、生保などへの影響は計り知れず、1990年代前半のバブル崩壊以上に日本経済への打撃になるとの見方もある。財務省、日銀は市場の動きを注視し、「有事」の際の対応策を練り始めているというが、「政治が与野党を超えて知恵を出さない限り、不安が現実化しかねない」(市場関係者)との危機感が徐々に広がっている。