国内でスマートフォン(多機能携帯電話)のブームが続いている。2010年の「日経MJヒット商品番付」では、堂々東の横綱にランクされたスマートフォンだが、市場はまだ伸びている。特に、まだユーザー数の少ない女性が注目を集めている。
米アップルの「アイフォーン(iPhone)」が市場を「独占」していたが、国内メーカーは2010年から、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したモデルを次々と投入し、対抗している。
鮮やかなピンク色が目を引く新機種
2010年は、モバイル通信機器の主役がスマートフォンへと変わる転換点になったと言えそうだ。電子情報技術産業協会(JEITA)が2011年2月9日に発表した10年の移動電話国内出荷実績は、前年比で6.3%増となり、3年ぶりのプラスとなった。低迷気味だった携帯市場を、スマートフォン人気が後押しした形だ。
とは言え、スマートフォンはまだ消費者に完全に定着したわけではない。時事通信社は2010年12月、全国の成人男女2000人にスマートフォンのアンケート調査を実施した。およそ3分の2に当たる66.2%が回答し、その中でスマートフォンを使っていると回答した人は3.8%にとどまった。中でも女性は潜在性が高い、と見られている。MMD研究所が254人の女性から回答を得た調査結果で、スマートフォンを持っているとしたのは、6.3%。一方で7割の人が「興味がある」と答えている。女性の購買欲を刺激できる機種を生み出せば、大ヒットにつながる可能性は大きい。
NTTドコモは2011年2月24日、スマートフォン2機種とタブレット端末1機種の新モデル発表会を都内で開いた。特にスマートフォンには、女性客を意識した工夫が施されていた。
ソニー・エリクソン製の「エクスペリア・アーク」は、2010年4月に発売された「エクスペリア」の新作だ。ブルー、シルバーと並んで鮮やかなピンク色の機種が目を引く。発表会に登場した女優の朝倉あきさんも、「スタイリッシュで、とてもきれい」と印象を語った。ソニー・エリクソンは、「女性に受け入れられる、『一歩踏み出した色』としてピンクを選びました」と話す。形状も独特で、本体の中央部にかけて弓のようなカーブを描いており、初代モデルとは異なる。持ちやすさを追求した結果、「アスリートの鍛え上げた筋肉が盛り上がったような、人間的な曲線」に行き当たったのだと、同社は説明する。
ドコモの販売「35~40%を女性が占めた」
一方、NECカシオが発売する「メディアス」は、同社初のスマートフォンだ。セールスポイントは、厚さ7.7ミリと「世界最薄」な点で、重さも105グラムと軽い。同社によると、「スマートフォンは画面が大きいけど厚ぼったい」といった女性の意見を聞き、製品開発に生かした。テーブルなどに置いたときにも「薄くて軽そうな見た目」になるように、色使いにもこだわった。「1枚の紙のように見せたい」と担当者は話す。
開発に際しては、まだスマートフォンを持っていない女性が「使いこなせるだろうか」という不安を取り除くことを念頭に置いたという。各種機能を使いやすくするため極力シンプルなデザインに仕上げる一方、いわゆる「お財布機能」やワンセグといった、従来の携帯電話の機能を取り入れたのも、「女性のリクエストが多かったため」と担当者は説明する。
NTTドコモの山田隆持社長は、同社の1月のスマートフォン販売台数について「35~40%を女性が占めた」と言及し、春モデルについても「ぜひ女性に使っていただきたい」と強調した。女性にターゲットを定めるのはドコモだけではない。KDDIは1月、コンパクトなサイズで本体にピンク色を使ったモデルを既に発表しており、3月中には発売する予定だ。2月28日にも新作を発表し、田中孝司社長は2011年度に発売する新機種について「半数以上はスマートフォン」と明言した。各社とも、女性マーケットの掘り起こしに懸命のようだ。