少女時代やKARA、BIGBANGと、いわゆる「K-POP」アイドルが次々と日本に上陸し、音楽市場を席巻している。だがその人気は、韓国政府が裏で仕掛けたものではないかとの発言内容がテレビ番組で流れ、波紋を呼んでいる。
その主は、キャスターの木村太郎氏だ。韓国の文化を海外に紹介する機関がインターネット上で、ある「操作」をしてK-POPアイドルの知名度アップを図っているというのだ。
ネット口火に人気を広げていくプロモーション
木村氏の発言は、フジテレビの情報番組「Mr.サンデー」でのものだ。2011年2月6日の放送で、「K-POPにハマる女たち 韓流男子にひかれるワケ」と題した特集が組まれた。司会の宮根誠司が、日本でヒットを目指す韓流タレントたちは母国で徹底したレッスンを受けてくる点に触れると、木村氏は「レッスンだけじゃないんですよ」とした後で、
「韓国政府の中にブランド委員会というのがあって、K-POPをブランド化しようとすごく力を入れている」
と話した。つまり、国を挙げてK-POPを売り込んでいるというのだ。さらに木村氏は、「ユーチューブ」などネットの動画投稿サイトにあるK-POPアイドルのプロモーションビデオ(PV)に関して、ブランド委員会が広告代理店を通じて再生回数を上げさせていると主張した。
実はネットによる宣伝活動は、K-POPのプロモーションに欠かせない。音楽ジャーナリストの古家正亨氏は2010年11月16日放送のNHK番組「クローズアップ現代」で、「(K-POPは)あえて映像だったり、音楽の情報発信をネットを通じて拡散させて、実際に見てみたいという思いにさせて、そこからショービズに発展させていくという手法を使っている」と説明した。ネットでの「流行」を口火に、ブームを起こしていこうとの作戦だ。このため、動画サイトでのPV閲覧数が多ければ、「話題のアーチスト」として人気が広がるということだろう。
動画再生5000万回の女性グループ
ユーチューブに投稿されたK-POPスターのPVを見ると、確かに閲覧回数がずば抜けているものがある。例えば女性グループ「ワンダーガールズ」の曲は、再生回数が5000万回に迫ろうかという勢いだ。少女時代のヒット曲「Gee」韓国語版は約3700万回で、ほかの歌手を見ても1000万回以上は珍しくない。J-POPの場合、AKB48の「ヘビーローテーション」が約2400万回だが、嵐やExileといったヒットメーカーでもユーチューブに限ればPV閲覧数はそこまで多くない。日韓の音楽マーケティング上でのネット戦略の違いかもしれないが、海外向けを見越した英語の歌詞ではなく、韓国語で歌っているPVでこれほどの再生回数というのは驚きだ。
木村氏が指摘した組織の正式名称は「国家ブランド委員会」で、2009年1月に大統領直属の機関として設置された。韓国への理解を世界で深めてもらうため、国としてのブランド力を上げる取り組みが主眼だ。ウェブサイトには、韓国の政治経済や文化、国際貢献活動、ビジネス、先端技術を幅広く紹介している。「国家ブランドによってその国の国民、企業、商品への評価も変わります」と、ブランド向上をとても重視している様子がうかがえる。「韓流」を取り上げた個所もあるが、内容は一般的な説明で、K-POPの最新情報まではカバーしていないようだ。
木村氏の発言に、韓国のマスコミも反応した。韓国・中央日報は2011年2月28日付の記事で、国家ブランド委員会の事務官のコメントを紹介。「大衆文化を国家がコントロールするのは常識的にありえない」と不快感をあらわにしたとしている。