利用者低迷に苦しむ本州と四国を結ぶフェリー会社2社が、「萌えキャラ」を採用したPR活動を実施している。
2011年4月からの新高速料金でさらなる利用者の流出が懸念される中、若者を中心に顧客を増やそうという狙いだ。
グッズは即完売
本州と四国を結ぶ航路は、09年3月から実施された高速道路料金の「休日上限1000円」割引の影響で、乗用車やトラックの乗船台数が減り続けてきた。フェリー各社も国の支援を受けながら料金値下げを実施してきたが、それでも利用者の減少は食い止められない。
岡山県の宇野港と香川県の高松港を結ぶ宇高航路を運航する「国道フェリー」は10年4月から、水色のセーラー服を着た「うたかまりん」ちゃんをPRキャラクターに起用し、まりんちゃんを描いたステッカー2種を発売した。国道フェリーによれば、
「半世紀に及ぶ旅客カーフェリーの歴史や船旅の快適さを若い世代にもっと知っていただくため」
高速道路の料金割引の影響で航路廃止の危機に直面しての起死回生の策だった。
グッズの情報は口コミやブログで広がり、1か月もしないうちに完売。8月には姉の「かれん」ちゃんを加えてTシャツなどを販売し、これらも2か月のうちに完売となった。
11年1月には次女の「いおん」ちゃんも登場し、「うたか3姉妹」として同社の50周年記念をPRしている。3姉妹の描かれたステッカーやハンドタオルは、すでに在庫の半分が売れたという。
「萌えにはストーリーが必要」
和歌山港と徳島港を結ぶ「南海フェリー」が萌えキャラを発表したのは11年1月22日。キャラクターはセーラー服を着た「和歌山育ちの高校1年生」という設定で、2月9日には徳島側のキャラクターも登場させた。
同社や和歌山、徳島両県などで構成される「和歌山徳島航路活性化協議会」が起用を決定し、デザインは和歌山市内のイラストレーターに依頼したという。
「フェリーというもの自体を知らない若い世代にアピールしていきたいと考え、ゆるキャラではなく美少女キャラを採用した」(南海フェリー)
こちらは1月から2月にかけて2度キャンペーンを実施し、期間中に乗船してアンケートを答えた乗客に下敷きや缶バッジをプレゼントした。
萌えキャラを起用する団体、組織は全国各地で後を絶たない。2008年11月に発売された秋田県うご農業協同組合の「あきたこまち」のように、人気イラストレーターの描いた美少女キャラをパッケージに採用し、通常は3年かかって売る量の米が3か月で売れてしまうほどの大ヒットとなった例もある。
フェリー会社の萌えキャラの採用について、ネットでは、「かわいい」「右上が萌え」「悪くない」といった好意的な反応のほか、「船体に描かれていないのか」「もっとデフォルメが必要」「色が悪い」「ストーリーが伴っていないと萌えない」など、厳しいながらも改善へ向けたアドバイスが多く見られる。
南海フェリーの担当者は、「船体へのラッピングなどは、お客様の要望に応えるかたちで検討していきたい」としている。
フェリー業界にはさらなる試練が待っている。普通車の場合の片道料金は、宇野(岡山)-高松航路が平日2700円・休日2480円(4月1日からのキャンペーン料金)、和歌山-徳島航路が5600円から。
これに対して、政府が発表した11年4月からの高速道路新料金は「平日上限2000円」。本四道路の上乗せ料金はETC搭載の普通車が平日500円と安く設定される。
人気の萌えキャラたちの戦いは4月以降が本番となりそうだ。