住宅地の地価が上昇に転じた。国土交通省が発表した2011年1月1日時点の地価動向調査によると、全国主要150地区のうち、16地区の地価が前回調査(10年10月1日)に比べて上昇。このうち住宅地は全国42地区のうち、11地区の地価が上昇した。
住宅地の上昇は、前回調査時が佃・月島(東京都中央区)の、わずか1地区だけだったので、今回は大幅な増加となった。上昇した地区が下落した地区(7地区)を上回るのは08年1~3月期以来、約3年ぶりのことだ。
横ばいだった地区も24地区(57%)を占めたことから、国交省地価調査課は「住宅地の地価は下げ止まり、転換傾向がより鮮明になった」と話している。
名古屋市は大曽根と覚王山、御器所の3か所
国交省の「地価LOOKレポート」によると、住宅地で上昇したのは11地区。東京都内は港区高輪と芝浦、江東区豊洲といった湾岸エリア近辺が上昇した。
神奈川県では川崎市元住吉と、いまや「第3の山手エリア」の代表的な住宅地となった新百合ヶ丘の2か所。愛知県名古屋市は東区大曽根と千種区覚王山、昭和区御器所の3か所で上昇した。
大阪圏は、大阪府豊中市と、兵庫県が神戸市東灘区岡本と芦屋市のJR芦屋駅周辺地区の2か所だった。国交省は「高級住宅地など、ブランドイメージ高いエリアから上昇している」と話している。
11地区の伸び率はいずれも「0%超3%未満」と緩やかではある。
地価が上昇している住宅地の共通点は、マンション供給が盛んなことだ。不動産経済研究所の調べでは、首都圏の新規マンション販売は10年12月まで11か月連続で伸びている。
みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏は、「東京圏は10年3月から、大阪圏では同年5月から、マンションの売れ行きを示す初月契約率が好調ラインとされる70%を超え、それとともに供給が増加してきました」と話している。
東京都内では湾岸エリアなどを中心に、現在もマンション建設や大手不動産などによるマンション用地の取得が進んでいて、国交省も「(マンション供給が)地価の上昇に寄与している」と話している。
好調なマンション販売、短期間で終息も?
マンションの売れ行きが回復した理由のひとつは、値ごろ感が強まったこと。みずほ証券の石澤氏によると、「2007年をピークに東京23区で15%、山手(都心部)エリアで30%程度、価格が低下した」という。これに加えて、住宅ローン金利の低下や、政府の住宅エコポイント制度や減税策などで、消費者の住宅購入意欲が高まった。
ところが、前出の石澤氏は「マンション販売の好調は、短期間で終息するかもしれない」と指摘する。住宅地の地価上昇を支えてきたマンション販売だが、今回調査の上昇地区にあたる東京・豊洲のマンション価格はすでに上昇しはじめており、値ごろ感が薄れてきた。
さらに、「2008~09年に低価格マンションを供給してきた中堅デベロッパーの倒産が相次いだことで、最近は大手事業者が中心の供給体制です。そのため低額物件が不足し、購入者にとって、よい取得環境ではない」という。
マンション事業者もおのずと、供給戸数を増やすことに慎重になるというわけだ。