業績好調にもかかわらず、メガバンクの視界が晴れない。2010年9月の武富士破綻をきっかけに、消費者金融に対する過払い利息の返還請求件数が再び増加傾向にあるからだ。
グループに大手消費者金融を持つ三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)と三井住友FGは、引当金の積み増しが業績下押し要因になりかねず、年度末にかけてノンバンクの動向を注視している。
12月の返還請求件数は前月比14%もアップ
3メガバンクの2010年4~12月期の連結純利益は、三菱UFJ5518億円、三井住友5151億円、みずほFGも4220億円と、前年同期の2~3倍と好調だった。3グループとも企業倒産の減少で不良債権処理損失が減ったほか、「債券バブル」を受けて上期の債券売買益が急増したためだ。
ところが、グループに消費者金融を持つ三菱UFJや三井住友の幹部の顔色はさえない。武富士の破綻後、アコム、プロミス、アイフルの大手消費者金融3社への返還請求件数は右肩上がりとなり、2010年12月は前月比14%もアップした。武富士は、過払い利息返還の未請求者に債権者として届け出るよう呼びかけているが、法的処理手続きによって返還額がカットされるのは必至。このため、過去に利用した他の消費者金融に請求を急ぐ人が増えているとみられる。
過払い利息の返還負担に加え、改正貸金業法の完全施行で貸出利息も減少し、三菱UFG系のアコムは2010年4~12月期連結決算の最終損益が421億円の赤字に転落。三井住友系のプロミスは104億円の最終黒字を確保したものの、3割以上の減益を余儀なくされた。
プロミス連結子会社化「将来的に排除しない」
ただ、2010年12月の返還請求件数は前年同月と比べると4.7%減少で、市場では「武富士の影響は限定的」(アナリスト)と楽観的な見方も出ている。だが、武富士への返還請求の締め切りが2月末に迫る中、「駆け込み請求が増え、件数が急カーブで上昇する可能性は十分ある」(メガバンク幹部)とピリピリムードが続く。
想定以上に返還負担が増えれば、メガバンク側が資本支援や人的支援を検討する可能性もある。三井住友銀行の国部毅次期頭取は1月の就任会見で、プロミスを「将来的に連結子会社化することも排除しない」と述べた。
メガバンクの足元の経営環境をめぐっては、企業の資金需要が伸びず、超低金利で利ざやを稼げない状況は変わらないうえ、「債券バブル」も下期は失速している。さらに「ノンバンク爆弾」を抱えるメガバンクにとっては、落ち着かない期末になりそうだ。