アースがフマキラー狙った最大理由 売上高海外比率2割超は魅力

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   「どこでもべープ蚊取り」などの殺虫剤「べープ」シリーズで知られる、国内殺虫剤3位のフマキラー(東証2部)を巡る日用品大手2社の争奪戦が決着した。

   「ごきぶりホイホイ」などが主力の殺虫剤1位のアース製薬(東証1部)が海外市場に強みを持つフマキラー買収をもくろんだが断念し、フマキラーの大株主であるエステー(東証1部)に保有するフマキラー株(10.1%)すべてを約14億円で売却すると発表したのだ。やはり日本で敵対的手法はなじまなかったようだ。

成長を続けるには海外に飛躍するしかない

   争奪戦の対象になったフマキラーの売上高は237億円(2010年3月期)で、アースの1034億円(2010年12月期)より小ぶりだ。しかし、フマキラーは1963年に開発した世界初の電気蚊取り「べープ」シリーズなど存在感のある商品構成が強み。

   1970年代から強化している海外戦略でも、業界の先頭を走る。製造拠点のあるインドネシアなどでは「殺虫能力が高い」など現地の事情にあった商品を展開することでブランド力を持つほか、世界約80カ国の販売網を持つ。売上高の海外比率は2割超で、3%程度のアースと比べると海外の強さが際だつ。

   どの業界も、頭打ちの国内市場をめぐる打開策を模索しており、殺虫剤も例外ではない。アースは国内殺虫剤市場で5割程度のシェアを持ち、「金鳥」の大日本除虫菊の25%前後、フマキラーの1割余と合わせ、3社の寡占状態だ。

   アースは2010年12月期にコスト削減などが功を奏し、最終(当期)利益が過去最高を更新する34億円だったが、さらに成長を続けるには国内のイス取りゲームはほどほどにして、海外に飛躍するしかない。特に東南アジアなどの新興国は、生活レベルの上昇に伴って今後、殺虫剤需要が高まると見込まれている。また、アースはフマキラーと経営統合すれば資材調達などの交渉力も増すと見ていた、とされる。

   アースは2004年ごろから少しずつ市場でフマキラー株を買っていたが、2008年に急速に買い増し、約10%の筆頭株主に躍り出た。アースは公式には「純粋な投資目的」としか説明しなかったが、「敵対的買収」と受け止めたフマキラーは創業家が自社株を買い増すなどの買収防衛策を講じ、抗戦の構えをとった。

「乗っ取るかのような誤解が解けなかった」

   さらに2010年6月には、かねて業務提携関係にあったエステーを引受先とする第三者割当増資を実施し、エステーがフマキラー株15%を保有。筆頭株主もアースからエステーに交代した。

   フマキラーの海外販売網は「お部屋の消臭力」などの芳香剤や防虫剤「ムシューダ」が主力のエステーにとっても魅力的だ。フマキラーにとっては国内殺虫剤の最大手に飲み込まれるよりは、日用品同士ながら商品構成が重なられないエステーと組む方がいいと判断したようだ。

   アースの大塚達也社長はフマキラー株を発表した2011年2月14日の会見で「(殺虫剤の)業界再編なども視野に入っていたが、(フマキラーを)乗っ取るかのような誤解が解けなかった」と撤退理由を語った。ただ、同日、別途会見したエステーの鈴木喬社長はフマキラー株の追加取得や経営統合を否定。25.6%の筆頭株主として、フマキラーを持ち分法適用会社にとどめ、緩やかな提携を続ける。新日本製鉄と住友金属工業が合併方針を決めるなど、産業界に再編機運はあるが、「乗っ取るかのような誤解」では成功しないことを示した。

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