グルーポンに、今度は「偽造クーポン」疑惑が浮上した。きっかけは、東京・吉祥寺のたい焼き店がグルーポンで販売していたクーポンの取り扱いを突然中止。その理由に、グルーポンの偽造クーポンへの対応をあげたからだ。
安く商品が購入できたり、サービスが受けられたりすると爆発的な人気を博したクーポン。一方、提携する販売店側としても集客力が高まるなどの宣伝効果を期待していた。
このたい焼き店では、今回の中止を「苦渋の決断」としている。
「重複利用があったとの報告を受けている」
グルーポンは、「たいやき鯛勝」の商品「1000円」分を50%OFFの500円で販売した。「たいやき鯛勝」のブログによると、2010年12月にグルーポンの営業担当者と交渉し、12月26日に急遽掲載が決定。これまでに1700枚が売れ、利用期間は6月までだった。
ところが、2011年2月15日のブログに「グルーポンのクーポンに関してのお知らせ」を掲載。同日付でグルーポンが発行したクーポンの使用を中止することを明らかにした。 この日のブログでは「返金、苦情等の問い合わせはクーポンへ連絡ください」と、一方的な通告のようにみえたが、翌日にはサービス停止について理由を説明。「偽造クーポン」の存在があったとし、それに伴うグルーポンの対応が「よくありませんでした」とこぼしている。
2月21日時点で、「たいやき鯛勝」は「グルーポン側からは第3者を立てて話し合いがしたいとの連絡があったが、その後は何も連絡もない」としている。
一方、グルーポン・ジャパンは、「今回の件は偽造クーポンではなく、重複利用があったとの報告を受けている」と説明している。重複利用は1件だけで、「先方からの電話の後、重複のあったクーポンに関してはできる限りの対応をしました」と話している。
告知については「購入者に対してのみ、すべてキャンセルの連絡をしています」とし、クーポン利用の中止についてホームページなどによる情報開示は行っていない。
店側も「こんなはずでは…」との思い強まる
グルーポン・ジャパンは「クーポンをすべてキャンセルしたのは、偽造クーポンが理由ではない。通常であれば、クーポン番号の確認で、重複利用を防ぐことができる」と、今回があくまでイレギュラーなケースという。
「偽造クーポン」が増えれば、店側は確認作業に追われて手間がかかるため、販売機会を逸してしまう心配がある。「たいやき鯛勝」も、「本物のクーポンと偽物のチェックのため、(販売に)予想以上に時間がかかってしまった」と、かえってお客に迷惑がかかったという。
また、ブログでは「料金の支払いについても当店は大企業とは違い、個人経営の小さな店なので正直厳しいのが実情でした」と厳しい資金繰りのようすが吐露されている。「このままでは当店の宣伝、リピーターの獲得どころか、存続さえ危ぶまれる状態に陥ってしまう」と深刻だ。
あるクーポンサイトの運営者は「偽造クーポン」について、「クーポンを買った人が悪意をもってすれば、グルーポンでなくとも起こり得ることです」と指摘する。しかも、グルーポンは偽造対策を、比較的しっかり施しているほうだという。
「おそらく、利用者や提携する店が急激に増えたことで、こうした社内ルールが隅々に行き渡っていないのではないか。営業担当者と店側の意思疎通もできておらず、店側も宣伝効果よりも、事前予約番号の照合などの負担が予想以上にかかっていることに、『こんなはずでは』との思いを強くしているのではないか」とみている。