国内投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(AP)が、投資先の東京スター銀行から手を引くことになった。スター銀株式を、APに買収資金を融資した銀行団に譲渡する。
スター銀が業績不振に陥っているためだが、APや現経営陣は引き続き経営に参加する方向だ。背景には融資銀行団の事情も絡んでおり、関係者の中には「問題先送りだ」との指摘も出ている。
経営不振で赤字続き、配当できず
スター銀は1999年に破綻した東京相和銀行が前身。米投資ファンドのローンスターが2001年に買収した後、APが2008年、特別目的会社(SPC)を通じて約2500億円で買収。買収資金のうち、約1700億円は新生銀行やあおぞら銀行、ローンスター、仏金融大手クレディ・アグリコルなど国内外の金融機関からの融資で調達した。
融資の利払いについては、スター銀からの配当を充てることになっていたが、スター銀は2010年3月期に27億円の最終赤字、2010年9月中間期も31億円の最終赤字に陥り、配当が困難になった。2011年1月末の利払い期限を前に、債務不履行となる恐れがあったため、APと銀行団が今後の返済について協議。銀行団へ株式を無償譲渡することで合意したという。具体的には、APと銀行団でつくる新たなファンドにスター銀の全株式を移す方向だ。
しかし、この決着について、ある関係者は「問題の先送りに過ぎない」と指摘する。
銀行団の一部に抜本策講じるべきだ、との厳しい意見も
実は、銀行団の一部からはAPに対し、スター銀の経営陣交代や新たな投資ファンドの参画など業績や財務の改善に向けた抜本策を講じるべきだ、との厳しい意見も突きつけられていたようだ。ところが、投資の損失を確定させたくないAPが抵抗したほか、APへの融資が不良債権化することで、貸倒引当金の積み増しを迫られることを恐れた新生銀行も抜本的な処理に反対した。
結局、「親会社のペーパーカンパニーの資本構成が変わるだけで経営陣は変わらず、銀行の債権放棄や引当金積み増しも必要ない」(関係者)という妥協策に落ち着いたというわけだ。
ひとまず決着したものの、APや銀行団が将来の損失を回避するには、スター銀を再建し、株式を当初の買収額を上回る価格で売却するしかない。しかし、今回の株式譲渡で「誰が主導権を取るのか分からない最悪の体制になった」(関係者)との指摘も出ている。スター銀の再建が難航すれば、今回の処理は単なる時間稼ぎに終わる懸念もありそうだ。