新宿での通り魔を中学3年生男子(15)が予告した事件の後、その兄(19)が予告場所でナイフを振り回して逮捕された。不可思議な行為だが、事前に兄と称して悩みを打ち明けるネット上の書き込みがあった。どんな事情があったのか。
「僕もやけを起こそうかとも思います」
兄もネット上で事件予告の可能性
中学生が2011年2月12日に逮捕された翌日未明。Q&Aサイト「教えて!goo」では、その兄と称するネットユーザーの質問投稿があり、回答へのお礼には、こんな不穏な書き込みがなされていた。
実際、17日には、兄が新宿の交番に「通り魔をしてきた」とカッターナイフを持って駆け込み、銃刀法違反の現行犯で逮捕されている。報道によると、原宿署がユーザーとの関連を調べている模様だ。
ユーザーによると、中学生の弟が予告事件を起こしたのも、自らが追い詰めたのがきっかけだという。
それは、横浜市の実家から弟を4年前に無理やり連れ出して、新幹線で京都へ出かけたことだった。それ以来、弟は全国各地に家出するようになり、警察に捕まっては施設入りする生活を繰り返した。
逮捕された兄は、東京都練馬区在住と報じられている。このユーザーも、今は弟と絶縁状態だとして別居を明かし、予告事件のことはネット上で知ったという。
ネット上で質問したのは、自らが弟をダメにしてしまったとして、どう責任を取ったらいいか悩んだかららしい。その勇気はないとしながらも、自殺したいとも漏らしている。
さらに、自らをニート状態と告白し、成人してもホームレスになってしまうと訴える。さらに、「追い詰められてます」「食べるのに困って何かやらかすかもしれません」「もう何もかも終わりにしたいです」。兄は無職と報じられており、父親から仕送りを受けている可能性はある。が、書き込みからは、将来に絶望している様子だ。
父親が暴力振るう家庭環境も関係?
報道によると、中学生の兄は、弟がネット上で誹謗・中傷を受けていることについて、「バカにされている」と激怒。実際に通り魔が起こりうることを見せつけてやろうと、「仇討ち」に及んだ。実際、兄が警察に出頭するのと同じころ、「男がナイフを振り回している」と110番通報が入っている。
兄弟が犯行を重ねた背景には、家庭環境も関係している可能性がある。
前出のネットユーザーによると、父親が家の中で暴力を振るい、自分や弟は、恐怖に怯える日々が続いた。いわば「機能不全家族」だったという。弟が事件に走った一因は、父親のこともあったと言っているが、父親は自らの責任を絶対に認めなかったという。
このユーザーは、ほかのユーザーからの回答で、家族やニートの問題で誰かに相談してみることを勧められている。
そこでは、いくつか相談先が紹介されていた。事件の兄ともみられるユーザーからは、何か連絡があったのだろうか。
そのうちの1つで心理・キャリアカウンセラーの川瀬英作さんは、取材に対し、ユーザーらしき人からの相談は記憶にないとした。
兄弟の事件については、川瀬さんは、こう言う。
「親の暴力や離婚、酒浸りといった家庭環境から問題が起こる場合もありますし、逆に、子どものニート、家庭内暴力がきっかけになることもあります。また、家庭に問題がなくても、人間関係がうまくいかず、いじめなどが原因のこともあります。そして、子どもたちは、昼夜正反対の生活を続けるなどして、誰にも相談できず、社会から孤立していきます。自分を分かってくれる人がいないと、攻撃性も強くなるわけです。事件を起こさないためにも、本人が問題に気づいて、専門家の手助けを求めることが何より大切でしょう」