韓国のKBSテレビは2011年2月15日、北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記の次男、正哲(ジョンチョル)氏がシンガポールで、英国ミュージシャンのエリック・クラプトン氏の公演や豪華なショッピングを楽しんでいたと伝えた。
北朝鮮で「民族最大の祝日」とされる金総書記の誕生日(2月16日)の直前、めったに公の場に出ることのない正哲氏は、食糧難に苦しむ北朝鮮国内を尻目にシンガポールで豪遊していた。しかも「ギターの神様」クラプトン氏のTシャツを着たラフな姿で、左耳にはピアスをしていた。
後継者争いで敗れ、権力の中枢から外れた?
韓国紙の朝鮮日報によれば、正哲氏は2月8日に同行者数十人を連れてシンガポールを訪問し、高級ホテルの1泊60万ウォン(約4万5000円)のスイートルームに15日まで滞在した。テーマパークやカジノなどの観光地を訪れ、高価なダイヤモンドなども購入していた。14日のクラプトン氏のコンサートは1人35万ウォン(約2万6000円)のVIP席で観覧し、Tシャツなどのグッズも大量に買い込んだという。
北朝鮮ではいま、金総書記の誕生日前に恒例となっている特別配給も支給されなかったほどの食糧難が続いている。朝鮮日報は「国の住民の大多数が毎日の食事にも事欠く状況で、権力者の息子がロックコンサートに熱狂することなどあってはならない」と批判している。
テレビ朝日の17日の番組内で、ジャーナリストの高世仁氏は「北朝鮮では西側の音楽を聴くこと自体がよろしくない。ましてやピアスをしたり、こうやって豪遊したりするのは考えられない」と、今回の豪遊がいかに異例かを指摘。後継者レースから脱落したとされる正哲氏の立場について、「映像を見る限り、権力の中枢から外れたと考えられる。長男の正男氏がときどきメディアで『私は自由なんだ』と言っているが、それに近い」と解説した。