民主党が事実上分裂した。小沢一郎・元代表の処分をめぐり党内対立が激化していたところ、小沢氏に近い16人の衆院議員が会派離脱届・新会派結成届を出したのだ。制度論上、離脱が成立するかどうかはともかく、菅政権が予算関連法案などの成立に向けて目指している「衆院3分の2確保」は吹き飛びかねない情勢だ。
2011年2月17日、渡辺浩一郎衆院議員ら計16人(いずれも衆院比例選出)が、離脱・新会派結成の届けを出し、会見した。
「小沢ガールズ」の著名な顔ぶれは見当たらず
渡辺氏が読み上げた「新会派」結成宣言文では、菅政権の消費税増税へ向けた動きについて、「菅政権は国民との約束、マニフェストを捨てた」と指摘した。さらに「菅政権は政治主導の御旗も捨てた」「民主党の理念、そして『国民の生活が第一』という国民の皆様への約束をも捨て去った」と、厳しい調子で菅政権を斬って捨てている。
また、16人は離党はしないものの、予算関連法案への対応については「党執行部の指示とは異なることもあり得る」(渡辺氏)と造反の可能性を示唆している。小沢氏の処分問題との関係については、渡辺氏は「小沢元代表がどうのこうのということではありません」と否定した。
ちなみに16議員の中には、マスコミによく登場する著名な「小沢ガールズ」の顔ぶれは見当たらない。
16人の会派離脱には会派代表者(岡田克也幹事長)の了承が必要で、かつ岡田幹事長は離脱を認めない考えを示しているため、正式に離脱が成立する見通しは立っていない。しかし、予算関連法案への「造反予備軍」として手を挙げた形は残り、執行部にとっては不気味な存在となりそうだ。
細川元首相、公明の市川常任顧問、小沢氏の「懐刀」が会合
予算関連法案などの国会審議を巡っては、野党が過半数を占める参院での否決の後、衆院の「3分の2で再可決」というシナリオを菅政権は描いている。公明党が対決姿勢を強める中、社民党の協力を期待しているが、仮に協力が実現しても必要数をかろうじて1議席上回る程度で、肝心の民主党内から16人もの造反が出れば元も子もない。4月の統一地方選を前に、従来から指摘されている菅政権の「3月危機」「2月危機」が現実味を帯びてきた。
2月17日付の産経新聞朝刊によると、細川護煕・元首相と公明党の市川雄一・常任顧問、平野貞夫・元参院議員が会合し、「菅直人政権は早晩行き詰まるとの認識で一致したという」。平野氏は、かつて小沢氏の「懐刀」と称された人物だ。産経新聞は、この会合について「公明党との連携も視野に入れた小沢氏の戦略の一環との憶測も呼びそうだ」と分析している。
17日午後放送の情報番組「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)では、春川正明・読売テレビ解説委員が、離脱騒ぎについて「実質上、菅降ろしが始まったと見られて仕方ない状況」との見方を示した。司会の宮根誠司さんは「(菅首相が)ブチ切れ解散みたいなこともあるのかな」と話していた。
民主党倫理委員会は17日、小沢氏を22日に招いて、党員資格停止の処分案に対する弁明を聞くことを決めた。果たしてどういう結論を党常任幹事会に答申するのだろうか。