口蹄疫(こうていえき)問題で大混乱に陥った宮崎県が再び大きな困難に襲われている。高病原性鳥インフルエンザに感染した鶏が相次いで見つかり、養鶏農場での今冬の発生は2011年2月7日までに県内で11例にのぼり、全国の15例のうち7割以上を占めている。霧島山系・新燃岳(しんもえだけ)の噴火による被害も加わり、国内有数の養鶏地に激震が走っている。
「なんで宮崎ばかりがこんな目に…」。ある農家が吐き出した言葉に、多くの住民は同じ思いをかみしめている。10年春以降、口蹄疫は宮崎の牛や豚の間に爆発的に拡大。畜産や観光など県全体の被害は「今後5年間で2000億円を超える」との試算も出ていた。そのダメージが癒えない中、今度は鳥インフルエンザが宮崎を襲った。
宮崎県内の鶏舎は「開放型」が多い?
鶏の感染が鹿児島や愛知県では1例にとどまっているのに対し、宮崎の感染例は多い。それはなぜだろうか。
鳥インフルエンザはそもそも、鶏やアヒルなどの家禽(かきん)類の病気で、渡り鳥のカモ類が運んで感染を広げるとみられている。鶏舎の鶏に感染するルートは、既に感染した野鳥などのふんをつけたネズミなどが媒介したり、飲み水などを通じた可能性があると言われている。このため、「窓のない鶏舎で野鳥が入れないようにしたり、防鳥ネットをしっかり張り、人が出入りする時の消毒も徹底すれば、大きな感染拡大は防げる」と専門家は指摘する。
宮崎の場合はどうだったか。最初に感染が確認された鶏舎は窓がある「開放型」だったという。「関東などでは『閉鎖型』の鶏舎が多いが、宮崎県内の鶏舎は『開放型』が多い」といわれる。
また、2月4日に農林水産省の疫学調査チームが公表した同県川南町などの現地調査の結果によると、「鶏舎にはネズミが出入りできるすき間があった」「鶏の飲み水は未消毒のわき水で、付近の川などには例年より多くのカモ類がいた」などの事実が発覚、防疫態勢の不備が浮かび上がった。
「宮崎の温暖な気候が影響しているのでは」
さらに、県が「昨年立ち入り検査を実施した」と説明していた農場でも、実際は県の家畜防疫員が直接立ち入っていなかった例があったことも判明。「県自体の意識が甘かったのではないか」との批判も出ている。
県はその後、養鶏業者の管理獣医師らに任せていた立ち入り検査を、県の家畜防疫員や自治体職員が再度実施することを決め、改めて防疫態勢強化に懸命だが、行政への不信感がくすぶる。ただし、宮崎の態勢が、他県に比べて特別に悪かったとは言い切れない。
一方、研究者によっては「宮崎の温暖な気候が影響しているのでは」と天候要因を指摘する。例年なら朝鮮半島で越冬するのが、大陸が寒波で大雪になった影響で、カモやハクチョウなどがさらに南下して日本に来た、と指摘する専門家もいる。全国的に寒さが厳しいため、「鳥がエサとなる虫などを求めて、積雪のない、暖かい宮崎に多く集まった可能性もある」というわけだ。
当面、官民一体となった防疫の徹底で感染拡大を防ぐと同時に、宮崎でばかり感染が広がった背景の詳細な分析も必要になるだろう。