投開票まであと2か月に迫った東京都都知事選をめぐる動きが活発化している。石原慎太郎都知事は進退について明言を避けているものの、急に出馬が浮上したのが、飲食店チェーンなどを展開する「ワタミ」の渡辺美樹会長(51)だ。みんなの党から出馬するとの観測もあるが、渡辺氏は、消費税の増税を求める発言を繰り返している。今後、増税に慎重な同党の政策との整合性を問う声も上がりそうだ。
過去には教育や農業にも参入
過去3回の都知事選で圧勝している石原都知事については、2011年2月8日、長男で自民党の石原伸晃幹事長が、4選出馬を要請する方針を表明したばかりだが、知事は「世の中には、人材はもっと沢山いる」と、やはり態度を表明していない。現時点では、共産党の前参院議員の小池晃氏(50)が名乗りを上げているほか、正式に出馬表明をした人はいないが、東国原英夫・前宮崎県知事(53)、蓮舫行政刷新相(43)らの名前が取りざたされてきた。8日になって急浮上したのが、渡辺氏の名前だ。
渡辺氏は明治大学卒業後、佐川急便でドライバーとして働いて開業資金300万円を貯め、84年に居酒屋FC店として独立。居酒屋チェーンなどを中心に、学校法人運営、介護事業、農業など幅広く手がけている。安倍政権時代の「教育再生会議」の委員も務めた。
渡辺氏をめぐっては、「みんなの党」が渡辺氏の擁立を検討していると報じられているが、2月9日になって、渡辺氏は
「このたび報道されているようなみんなの党を含め出馬に関して他人に相談したり、支援要請したりした事実は一切ございません」
とのコメントを発表。渡辺氏からみんなの党にコンタクトしたことは否定したものの、みんなの党からの出馬要請や、自らの出馬の意志については触れなかった。
仮に渡辺氏がみんなの党からの支援を受けて出馬するとなると、問われてくるのが、同党が掲げる政策との整合性だ。同党の公約では、「将来的な増税を一切認めないという立場は、我々もとらない」と断っているものの、
「無駄遣いをなくさないままに「財務省が主導する『消費税増税』路線に舵を切ってしまった」
と、消費税の増税には慎重な立場だ。だが、渡辺氏は、過去に消費税率を上げるように求める発言を繰り返している。
「20~25%の消費税は必要だと思う」
例えば、経済誌「経営塾」09年10月号のインタビューでは
「今回(民主党が政権交代を果たした09年衆院総選挙)の民主党のマニフェストを見てもそうですが、いままで850兆円の借金を重ねてきた国の、どこから16兆8000億円が出てくるのか」
と、マニフェストの実現可能性に疑問を呈したうえで
「日本の財政赤字に対し、世界の人は『いつ破綻するんだ』という目で見ているということ」
財政再建の必要性を強調。また、政治に一番大切なものは「信」だというのが渡辺氏の持論だが、「Voice」10年7月号では、
「『消費税を上げる』というとき、年金をはじめ、いざというときのセーフティネットとして国がきちんと使ってくれると『信』が置ければ、国民は安心して税金を納めようとするはずだが、政治家は消費税増税から逃げるばかりで、ごまかしのバラマキになってしまっている」
と消費税率の引き上げを主張。10年9月23日の「報道ステーション」の消費税に関する特集の中でも、
「消費税は、何らかの形で上げるべきだと思っている。将来の不安が、皆さんのお金を使わせていない一番の理由。年金、介護、医療がしっかり整備されること、それから、この国の財政がしっかり立ち直ること。そして、無駄なお金を使わずに、この国が集中的に債権されていく。この国が経済が立ち直っていくところに集中してお金を出せること。それらのものを全て前提にした時に、20~25%の消費税は必要だと思う」
と、さまざまなハードルはあるとしながらも、具体的な税率にまで言及している。
国政選挙でかかげた選挙公約が地方自治体の選挙に直ちに当てはまる訳ではないが、仮に渡辺氏が、みんなの党から出馬することになった場合、何らかの説明を求められることになりそうだ。