コンピューター使ったアルゴリズム取引 機関投資家から個人投資家に広がる

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   コンピューターが相場の状況を判断して、自動的に株式の取引数量やタイミングを見極めて投資してくれる「アルゴリズム取引」が増えている。

   電子取引による売買の高速化に伴って、証券会社が売買状況などの取引データや、投資経験で得た売買戦略や数値計算など多用した分析をアルゴリズム化して投資家に提供するようになった。機関投資家の大口取引が中心だったが、最近はデイトレーダーをはじめとする個人投資家にも広がってきたようだ。

スピード売買が活発化の背景か

アルゴリズムを使った「株ロボット」をつくる個人投資家が増えている(「カブロボ・コンテスト」のホームページ)
アルゴリズムを使った「株ロボット」をつくる個人投資家が増えている(「カブロボ・コンテスト」のホームページ)

   アルゴリズムとは、ある特定の目的を達成したり、問題を解決したりするための手順を定式化したもの。アルゴリズムによる取引は、コンピューターが機械的に投資を指図するので、売買するときに「ためらい」や「迷い」がなく、短時間の売買でもタイミングを逃さないというメリットがある一方、瞬間的に注文が成立するため、あらかじめ注文条件を指値で設定するなど戦略的な売買が重要とされる。

   そんな「アルゴリズム取引」が俄然注目されるようになったのが、2010年1月に東証が導入した売買システム「東証アローヘッド」だ。コンピューターで小刻みに売買を繰り返す機関投資家や証券会社の要望に応えて、売買時間の短縮を図ったもので、東証が注文を受けてから注文成立の信号を送り返すまでの速さを、これまでの2秒前後から1000分の5秒にした。

   このスピードに対応するには、もはやコンピューターしかない。機関投資家やデイトレーダーのように頻繁に売買する人にとって、アルゴリズム取引はこのうえなく便利だ。

   しかも、これまでは株価がいくらになったら売買するという簡単な条件による自動売買だったが、最近は為替や取引株数、取引時間などの多様な取引条件によるプログラムが可能になり、より有利な価格で約定できるようになった。

   日本銀行の西村清彦副総裁は2010年11月に開かれたフォーラムで、「アルゴリズム取引の規模を示す統計は正式にはないが、東証への全注文のうち20~30%が機械的な売買の発注とみられる」と話している。

自分でプログラムを組む個人投資家も増えている

   アルゴリズム取引の多くが機関投資家であることは変わらないが、個人投資家のあいだにもジワリと広がっている。マネックス証券は、「自らの手でプログラムを組んでいる個人投資家は少なからずいますし、増えています」と話す。

   個人がアルゴリズム取引をプログラムして、投資効率を競う「カブロボ・コンテスト」(マネックス証券が協賛)への参加者は回を追うごとに増えている。

   プログラムを組むには、金融知識に加えて情報処理能力もいるので容易ではないが、このコンテストでは自ら開発したアルゴリズム取引をする「株ロボット」を使い、2010年10~12月の収益額で1億801万円を稼ぎ出した個人投資家もいたという。

   ただ、アルゴリズム取引は短期的に売り抜ける取引に偏っていることや、同じ仕組みを使った投資家が同じように売買してしまうので値動きが大きくなるといったリスクが指摘されている。日銀の西村副総裁は、「電子取引やアルゴリズム取引の普及によって、大口注文の自動執行が市場参加者を混乱させ、異例な価格の乱高下を起こし得る」と指摘。さらには「高速なアルゴリズム取引が違法な相場操縦を巧妙化し、摘発がさらに困難化する」とも指摘している。

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