いったい、いつから就活がはじまるのか――。大学生の就職活動が長期化している問題で、日本経済団体連合会と経済同友会、日本商工会議所が対立している。経団連が「広報活動は大学3年生の12月から、選考活動は4年生4月から」の方針で倫理憲章を見直すが、同友会が「3年生の3月から広報活動。選考活動は4年生の夏休みから」と提案。日商もこれを支持する姿勢をみせている。
新たなスケジュールが適用されるのは、2013年春の入社組、いまの大学2年生からだが、先輩が苦労している姿を目の当たりにしている学生はどう決着がつくのか、気が気でない。
経団連、スケジュールの再見直し「ない」
日本経団連が示した新たなスケジュールは、企業の会社説明会などの広報活動の開始を2か月ずらして「大学3年生の12月から」、選考日程は現行どおり(4年生の4月から)というもので、企業の採用活動の指針となる倫理憲章に盛り込むことを決めた。
一方、経済同友会は広報活動が「3年生の3月から」、選考活動は「4年生の夏休みから」と提案。経団連よりさらに3か月後ろにずらした。
この案に、日商の岡村正会頭は「4年の夏休みから採用にはいるのが正常な姿と思う」と同友会を支持。大学側も「12月からだと、1~2月の試験時期と重なる」と、日商に倣った。
ところが、これに経団連の米倉弘昌会長が噛みついた。「常識的に大丈夫なのか。卒業までの日数が短すぎると、かえって学生に不安を与える。卒業しても就職活動をしなければならない人がいるのではないかと心配になる」と、就活の短縮化に懸念を表明。「実効性に乏しい」と反論した。
新たに示したスケジュール案に賛否があることについて、日本経団連は「内容についてはわたしどもの考え方を示したもので、発表のとおりです」と強気の姿勢を崩さない。倫理憲章の改定は、「10年度中をメドに行うことに変わりありません」と話す。
何の解決にもならず、現状のまま流れていく
2010年10月に日本経団連が倫理憲章を改定するきっかけをつくった、大手商社などが加盟する日本貿易会は2013年春入社の新卒採用について、採用試験を4年生の8月以降にずらすことを提案した。
しかし、当の大学生の心境は微妙だった。商社を第一志望にしている学生にとって、希望がかなわなかった場合は、「掛け持ち」ができなくなるので、他業界の企業を受験できなくなる恐れがあるからだ。
日商や大学側が支持している、経済同友会のスケジュール案でも異論はある。夏休みの有効活用という狙いはわからないではないが、とくに理系の学生は卒論が間に合わなくなるなど、学業に支障を来たすと指摘されている。海外留学などの機会を奪うともいわれる。 著書に「就活のバカヤロー」がある石渡嶺司氏は「学生としては後ろにずれることを歓迎している人のほうが多いようです。ただ、経団連の倫理憲章にしても同友会にしても、単なるスローガンでしかないこともわかっています。結局、何の解決にもならず、現状のまま流れていくのだと思います」とみている。