八百長相撲を認める力士が相次ぎ、日本の国技で不正がまん延している可能性が出てきた。ところが、相撲協会の幹部は、過去には八百長が一切なかった、の一点張りなのだ。
国技の看板を背負った力士たちが、ガチンコのぶつかり合いをする――。日本相撲協会は、そんな前提の下で、公益法人として税制面の優遇措置などを長年受け続けてきた。
協会幹部にも疑惑が及びかねない?
ところが、その前提がもろくも崩れそうな不正が、次々に暴露されている。これまでも、暴行死、大麻、暴力団介入、野球賭博…と、角界は不祥事続きだった。しかし、今回は、土俵上でのことだけに、事態はこれまで以上に深刻だ。
報道によると、相撲協会が、携帯メールに名前のあった親方・力士たちから事情を聞いたところ、3人が八百長への関与を認めた。十両の千代白鵬関(27)と三段目の恵那司力士(31)、そして元幕内春日錦の竹縄親方(35)だ。「とりあえずコケます」「20で譲ります」などの文面が、削除したメールから復元され、勝ち星を金で売買していたと認めざるを得なかったらしい。
とすると、週刊誌などが度々取り上げてきた過去の八百長疑惑にも、再び疑いの目が向けられることになる。これに対し、相撲協会の放駒理事長は、記者団の質問に対し、「過去には一切なかったと認識している」との受け答えに終始した。つまり、過去の疑惑を洗い直す気持ちはない、と受け取られても仕方がない言いようなのだ。
角界に詳しいあるスポーツジャーナリストは、その背景には、協会幹部にも疑惑が及びかねないことがあるのではないかとみる。
「実は、メールに名前の出た13人は、過去に先輩たちの使いっ走りをしており、何らかの仲介をしていたのではないかといううわさがあるんです。そうだからこそ、自分たちが今度は、八百長に手を染めていった可能性があるわけですよ。ずっと昔から言われていたことで、連勝を伸ばしていたある横綱も、そんなキナ臭い話がありました」
公益法人認定取り消しの可能性
八百長の存在が言われた背景について、このジャーナリストは、こう指摘する。
「大相撲では、十両に上がると給料が毎月80万円ぐらいもらえるのですが、幕下に陥落すれば、給料はまったく出ないんです。だから、落ちる可能性が出てきたときは、星を買いたいと思う力士も出てくるわけです。いわば角界の互助会のようなもので、八百長に応じる力士も生活を助けてあげなければと思って応じている可能性があります」
高木義明文科相は、所管する相撲協会に対し、公益法人の認定を取り消すことも「あり得る」と言明している。法改正に伴う新しい公益法人への移行についても、政府閣僚らから「現状では厳しい」との声が相次いだ。それだからこそ、協会幹部は、過去のことも含めてこれ以上の疑惑拡大を防ぎたいわけだ。
もし公益法人取り消しになれば、多額の内部留保金を国に返納するなどしたり、場合によっては両国国技館を返上したりしなければならない。それだけになおさら、早く事態を収拾したいようだ。
前出のスポーツジャーナリストは、こう言う。
「警視庁がメールの存在を明かすなどして動くというのは、尋常の事態ではありません。前回の野球賭博では、取り消し危機を逃れたようですが、今度は、そう簡単には乗り切れないでしょう。もし取り消しなどになれば、プロレスのように独自に興行しないといけないでしょうし、NHKも放映しなくなる可能性があります。ですから、ますます大相撲が廃れていくようになってしまいますね」