JALがANAより安い運賃提示は御法度
前出の国交省の担当者も、
「どうしてもダメだという訳ではないが、あまりにも安い運賃が示された場合は『こういう(文書が出ている)状況なので、考え直してはいかがですか』といったお話しをさせていただくことがあります。JALに公的資金が入っているという性質にかんがみたものです」
と、文書を根拠に事実上の行政指導を行っていることを明かしている。
文書には、「いたずらに運賃の引き下げを行うこと」というあいまいな書き方しかされていないが、国交省によると、実は具体的な運用方針まで決まっている。JALがANAと同額の運賃を提示した場合は、おとがめ無しだが、ANAよりも安い運賃が提示されると、「お話し」をすることになるのだという。確かに、例に挙げた2路線の運賃を見る限りだと、JALはANAと同額の運賃設定だ。
JALに対する制約は「最終的にはなくなる性質のもの。具体的にいつなのかは分からない」(国交省担当者)だというが、大手2社と新興航空会社の関係については、「10年間同じ運用、基本的に改めてはいない」(同)と、今後も変化の兆しはない。
大手2社が11年1月31日に発表した10年4~12月期の業績を見ると、JALは1586億円、ANAは777億円の営業利益を計上しており、一応は黒字基調だ。現状では、大手2社からは「原価割れしない範囲で競争力のある運賃を設定する」という選択肢が奪われ、消費者に不利益をもたらしている。運賃制度はこれでいいのか、議論になりそうだ。