スカイマークやスカイネットアジア航空といった新興航空会社の運賃は、日本航空(JAL)や全日空(ANA)といった大手航空会社(レガシーキャリア)に比べて割安だ。
この背景に、新興航空会社のコスト削減の努力があることはもちろんだが、国土交通省の指針で、大手は新興航空会社よりも安い運賃を事実上設定できなくなっていることは意外に知られていない。だが、この指針が出来たのは10年以上も前。「規制が競争をさまたげ、運賃の高止まりを招いている」との批判も出そうだ。
10年以上前に決められた「運用指針」が生きている
航空運賃は、国際線については国土交通省の認可が必要だが、国内線は、航空会社が運賃を決めて届け出る仕組みだ。国内線の運賃が認可制から届出制に移行したのは2000年2月の航空法改正の時だが、この時に決められた「運用指針」が、今でも航空会社の運賃設定に影響を及ぼしている。
この運用指針によると、一定の要件にあてはまった場合、国土交通省は、航空会社に対して運賃の変更命令を出すことができる。その要件のひとつが、「影響力を持っている航空会社が、別の会社が新しく事業を始めたときに、影響力を維持しようとして不当に運賃を下げる」(略奪的運賃設定)というもの。
航空会社が運賃を届け出る先の国土交通省航空局航空事業課では、
「原価を無視した届け出があった場合は、変更命令が行われる可能性があります。変更命令に向けた調査が始まるのを嫌ってなのか、最近は各社とも、そのような(新興航空会社よりも安い)運賃は出してきません」
と話しており、大手からすれば「仮に原価割れしていなくても、自主規制をせざるを得なくなっている」といった面もありそうだ。