「日本国債格下げ」を巡り、民主党の岡田克也幹事長は「大半は自民党時代の国債の大量発行によって今日の事態を招いている」と発言した。一方、格下げを発表した格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は「民主党政権には債務問題に対する一貫した戦略が欠けている」との見方を公表しており、ネット上では岡田氏発言に異論も出ている。
国債格下げを巡っては、菅直人首相の「そういうことに疎い」発言が野党から「危機感に乏しい」などと反発を受けている。岡田幹事長は2011年1月31日の記者会見の後半で、格下げや菅首相発言に関連した質問に答えた。
「こういう状況を作り出したのはいったいどの党なのか」
「こういう状況を作り出したのはいったい誰なのか、どの党なのか。勿論、我々も責任を免れるつもりはありませんが、その大半は自民党時代に、国債の大量発行によって今日の事態を招いているわけですので」
岡田幹事長のこの回答は、自民党の谷垣禎一総裁による菅首相批判に触れた記者質問を受けたものだ。岡田幹事長は、上記のように自民党政権時代の責任について述べた上で「そのことは十分に踏まえてご議論頂ければ」と指摘した。「国の借金を増やし続けた張本人である旧与党のあなたたちに批判する資格があるんですか」とやんわり皮肉った形だ。
岡田幹事長は「我々も責任を免れるつもりはない」と明言しているし、10年度末見込みで943兆円超にのぼる「国の借金」を主に積み重ねてきたのが長期自民政権なのも岡田氏が指摘する通りではある。岡田氏発言についてのマスコミ報道では、時事通信が「格下げ、大半は自民の責任=岡田氏」の見出しで短く報じている程度で、特段「問題発言」とは捉えられてはいないようだ。
それでも、S&Pが日本国債の格下げを発表した際に「民主党率いる連立与党が参議院選挙で過半数議席を確保できなかったこともあり、民主党政権には債務問題に対する一貫した戦略が欠けているとS&Pは考えている」と指摘していることなどから、岡田氏発言に違和感を持った人も少なくないようだ。
「格付け会社は民主の問題を指摘しているのに…」
S&Pによる指摘だけでなく、「無駄の削減」を主張していた民主政権になってからの「借金」が「加速」している背景もある。国会に提出されている11年度予算案は、新規国債発行額が44兆2980億円と、2年連続(当初予算ベース)で借金が税収を上回る異常事態となっている。10年度当初は44兆3030億円だった。自公政権時代の09年度当初は約33兆3000億円、08年度当初は約25兆3500億円だった。
2ちゃんねるなどのネット掲示板や個人ブログには、「1年以上も与党をやっていて言うことか」「自分たちもばらまき政策をしてるくせに」「S&Pから民主の問題が指摘されているのに自民に責任転嫁するとは…」といった趣旨の批判が多く寄せられている。
国際金融アナリストの枝川二郎さんにきいてみると、「大半は自民の責任」という岡田幹事長発言は「その通りではある」と認めた上で、「民主党は、支出を減らせる前提で実施するはずだった諸施策を支出削減ができないまま行い借金を増やしている」とも指摘した。その上で「悪いのはどっちだという後ろ向きの議論ではなく、自民党も含め、どう国の借金を減らすのかという政策論で闘ってほしい」と注文をつけた。
岡田幹事長は11年1月31日の会見で、「我々は財政の立て直しについて計画をもっている」と10年6月に閣議決定された「財政運営戦略」などに間接的に触れ、「それが着実に進行していることについて、しっかり発信していかなければならない」とも訴えていた。一方、S&Pは「日本の財政見通しを(S&Pが)再び引き下げた場合には、格付けへの下方圧力が再度強まるだろう」との分析も公表している。