ダイハツ工業は欧州市場の新車販売から2013年1月末に撤退する。欧州市場で販売台数が落ち込んでいるほか、欧州の排ガス規制が強化され、新型車を開発すると採算が悪化するためという。
「ダイハツが米国だけでなく、欧州でも不人気で売れないため、やむなく撤退に追い込まれた」との見方も自動車業界では出ている。日本の自動車メーカーが欧州市場から撤退するのは初めて。ダイハツは2010年1月に同じく販売不振だった中国市場からも撤退している。
国内生産の割合が約8割と一番高い
国内ではライバルのスズキが、インドや東欧に積極的に進出し、現地生産しているのとは極めて対照的な動きといえる。国内ではタントやムーヴなどが好調で、ライバルのスズキを抑えて国内トップの軽自動車メーカーとして君臨するダイハツだが、国際競争では課題が山積している。
ダイハツは今回の欧州撤退について、「欧州CO2規制等に対応するためのコスト増加、ユーロ安・円高による採算悪化の環境下、日本生産の完成車輸出では事業が足り立たなく、事業の選択と集中の観点から今回の決定に至った」と説明している。株式市場ではダイハツの欧州撤退で効率化が進むと投資家が好感し、ダイハツの株価が上昇する一幕もあったが、ダイハツの長期的な成長戦略には不安が残る。
日本自動車工業会などによると、日本の自動車メーカーは2007年に海外生産が国内生産を上回り、2010年上半期の国内自動車メーカーの海外生産比率は57%と高まっている。国内生産の割合はトヨタ自動車やスズキが約4割、日産自動車やホンダが約3割であるのに対して、ダイハツは約8割と乗用車メーカー8社の中では最も高い。
言うまでもなく、日本メーカーは円高リスクを抑えるためにも海外生産を増やさざるを得ない。これまで日本メーカーにとって最大の海外市場は米国だったが、今や米国を抜き、世界最大のマーケットとして成長が続く中国への進出を、富士重工業など下位メーカーも積極的に進めている。ところがダイハツは米国で実質的に販売しておらず、中国からも撤退と、他メーカーとは逆のベクトルに進んでいるのだ。