デフレや円高など不透明感が拭えない日本経済。企業トップの交代シーズンを迎え、日本企業は山積する課題を乗り越える体制をどう築いていくのか。主要企業のトップ人事を探った。
まず注目されるのはソニー。ハワード・ストリンガー会長兼社長の去就で、社長職を離れるとの見方がある。2005年6月に会長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、09年4月からは社長も兼務し、構造改革を推進してきた。
ソニーは吉岡副社長と平井執行役との一騎打ち?
社長との兼務は負担が大きいことから、社長に日本人を抜擢する可能性がある。後任は、テレビ事業などを統括し、商品に強い吉岡浩副社長と、ゲームやパソコン事業などを統括しソニー・コンピュータエンタテインメント社長を兼務する平井一夫執行役との一騎打ちの様相だ。
三菱自動車は益子修社長(三菱商事出身)と西岡喬会長(三菱重工業出身)が在任6年。月内にも予定される2011年度からの中期経営計画発表を機に退任する可能性がささやかれ、後任社長は生え抜きからの起用が有力。業績急回復の富士重工業の森郁夫社長も交代観測が流れる。
80歳を迎えたスズキの鈴木修会長は、前社長が健康上の理由で退いた08年末から社長を兼務しており、会長に専念する時期を探っていると見られる。長男の俊宏専務が本命との観測がある。
経済同友会の次期代表幹事に内定した武田薬品工業の長谷川閑史(やすちか)社長も注目される。社長を続けながら代表幹事に就いた例は1975年度以降ない一方、同社が新薬の特許が相次いで切れる「2010年問題」に直面しているために続投するとの見方も根強い。
順当なら会長となって財界活動に時間を割くところで、後任に大川滋紀取締役(55)らが挙がるが、代表幹事に内定した後、正式の会見が開かれていないことから、「武田社内の体制が固まっていないので会見を避けているのでは」(マスコミ関係者)とのうがった観測も出ている。
NTTの三浦惺(さとし)社長は6月で就任丸4年。直近3社長は在任5~6年なので、続投か交代か、5分5分との声が多い。交代なら、後任にはNTTドコモの山田隆持社長が有力視されるが、2010年の海外大型買収を成功させた鵜浦博夫副社長の昇格説も浮上している。
日本生命、大和証券グループ、サッポロに注目
金融界で注目されるのが大和証券グループ本社の鈴木茂晴社長の去就。交代の場合の後任として日比野隆司副社長や岩本信之専務らの名前が挙がる。6月で在任7年となり、交代してもおかしくないが、三井住友フィナンシャルグループ(FG)との提携解消で業績が低迷していることから、続投観測も強い。
銀行では、りそなホールディングス(HD)の細谷英二代表執行役会長が6月で在任8年。7日には6000億円規模の増資実施を発表し、使命としてきた公的資金完済に前進することから、代表権返上などの形で次世代へ引き継ぐ可能性がある。
地方銀行の雄・横浜銀行の小川是(ただし)頭取も退任がささやかれる。元大蔵省(現財務省)事務次官で、6月で在任丸6年。後任には元財務次官で日銀副総裁を務めた武藤敏郎・大和総研理事長が浮上している。
保険業界は、2011年4月で在任6年になる日本生命保険の岡本国衛(くにえ)社長の去就も注目される。日本興亜損害保険の兵頭誠社長も退任の可能性があり、二宮雅也専務、山口雄一常務が後継に浮上。T&Dホールディングスの宮戸直輝社長も6月で在任6年(統合前の大同生命社長からは通算12年)になり、「退任の意向を固めた」との新聞辞令(1月19日付「朝日」)も出ている。
このほか、3月で就任から6年のサッポロホールディングスの村上隆男社長、4月で就任から4年の双日の加瀬豊社長、6月で6年の鹿島の梅田貞夫会長と中村満義社長らに交代観測が流れる。1998年就任の三井不動産の岩沙弘道社長の去就も注目される。
企業業績がひとまず回復基調であることから、全般的には概ね順当な展開が予想されるが、ここにきて波乱の予感もあるのが日産自動車。仏ルノー幹部による電気自動車(EV)の情報漏えい疑惑の展開次第で、ルノー会長でもあるカルロス・ゴーン日産社長が責任を問われる「ハプニング人事の可能性がゼロではない」(自動車業界関係者)との観測が出始めており、目が離せない。