菅内閣「3月危機」説に注目が集まっている。「政治とカネ」や消費税増税の難問に与謝野馨氏入閣の新たな火種を抱え込んだところに、さらに菅直人首相が野党へ政策協議入りを呼びかける中で「脅し文句」を使ったことで火に油を注いだ形だ。東京周辺で桜が散るころに菅内閣も散ってしまい兼ねない情勢だ。
「3月から4月に向けて、菅さんの進退が問われる局面になると…」。2011年1月25日、情報番組「朝ズバッ!」(TBS系)で時事通信の田崎史郎・解説委員がこう説明した。TBSの杉尾秀哉・解説委員室長も「そこが最大の山場ですね。そこを乗り切れるかどうか」と相づちを打った。
予算関連法案通らず行き詰まり?
1月24日に通常国会が始まったことを受け、「野党の協力が得られなければ政権の『3月危機』が現実味を帯びる」(共同)、「野党は政権批判をさらに強め、予算審議の行き詰まる『3月危機』がますます現実味を帯びる中(略)」(毎日)などと報じられ、菅内閣の「3月危機」が改めて指摘されている。
菅首相は1月24日、施政方針演説前にあった民主党両院議員総会で、政策協議入りに応じようとしない野党について、「野党の方に議論から逃げようという姿勢も見えている」と指摘し、挑戦的な表現で政策協議入りを迫った。これらの発言に野党の自民党や公明党は反発しており、菅内閣との協調は一層遠のいた形だ。
衆参ねじれの中、与党優位の衆院の議決が優先される11年度予算案はともかく、予算を執行するために必要な赤字国債を発行する関連法案などは通る見通しがたっていない。社民党の協力を得るなど衆院で3分の2以上の賛成を得て再可決できる可能性はなくもない。だが、民主党内では小沢一郎・元民主党代表の「政治とカネ」問題を巡り党内対立が続いており、民主党自身の足下すら固まっていない状態では「3分の2再可決」は「絵に描いた餅」だ。
予算関連法案が通らず、菅首相が3月末から4月上旬にかけて追い込まれると、一般的には衆院を解散し総選挙に打って出るということも考えられる。しかし、4月からは統一地方選が始まる。10年の地方選挙の実績から民主党の惨敗も予想されている。そんな状況の中、菅首相のもとでの衆院解散など「冗談じゃない」というのが民主党内の半ば「常識」だ。
予算と引き換え退陣説も
解散できないとなると、民主党内からも菅首相退陣論が出てきて不思議ではない。さらに、政策協議入りについて、野党が菅首相退陣を条件にして応じるシナリオも想定されており、こうなってくれば民主党内の退陣論は加速しそうだ。すでに1月25日付朝刊で、毎日新聞は「予算と引き換えに退陣(内閣総辞職)だ。(後継首相を選ぶ民主党代表選は)3月じゃないか」という「民主党の中堅議員」の声を伝えている。
「菅内閣の余命は80日」。週刊朝日(1月28日号)は、こう見出しをつけ、永田町で「囁かれている」見立てを紹介した。発売日から考えると「4月上旬まで」を想定しているようだ。
ちなみに、気象情報サイト「ウェザーマップ」の「2011 さくら開花前線」によると、東京周辺の開花予想は3月25日だ。そこから推定すると、3月末から4月上旬に満開を迎え、ほどなく散り始めるようだ。菅内閣が仮に3月危機を乗り切っても、4月の統一地方選で民主党が大敗すればその責任を追及されることになる「4月危機」が待ち構えている。