デフレで物の値段が下がる中、任意加入の自動車保険料が2011年4月以降、相次いで値上げされる見通しだ。自動車離れなどで損害保険各社の保険料収入が減る一方、事故被害者への保険金支払いが膨らみ、収支が悪化したことが背景にあるが、高齢者を中心に値上げするのが今回のポイント。
強制加入の自動車損害賠償責任(自賠責)保険も4月から4年ぶりに引き上げられることが決まり、マイカー保有者や運輸業界から負担増に対する不満が強まりそうだ。
損保大手は35歳以上を一律に扱ってきた
自動車保険料の値上げのきっかけは、損保各社などでつくる損害保険料率算出機構が2009年7月、保険料の目安となる「参考純率」を平均5.7%引き上げたことだ。
特に、損保大手はこれまで、35歳以上を一律に扱ってきたが、契約者の年齢層を細かく区切り、事故率が高まっている高齢ドライバーの保険料を2割近く引き上げる案も初めて提示された。これを受け、各社は保険料を小幅に引き上げながら、年齢区分の見直しを検討していた。
この結果、損保ジャパンは4月に2年連続の値上げを実施し、年齢区分も細分化する方針を決めた。引き上げ幅は平均1.5%だが、70歳以上については8%超に達する見込みだ。東京海上日動火災保険も7月、三井住友海上火災保険も2011年度中に同様の見直しを検討しており、高齢者を中心にした値上げは損保業界全体の流れとなりつつある。
再編で保険料の値下げが期待されていた
少子高齢化で高齢ドライバーが急増する中、高齢者による事故件数も増加傾向。一方、損保各社の保険料収入は、若者の車離れや保険料が安いコンパクトカー人気で減り、収支は悪化している。損保業界は「高齢者の保険料を引き上げなければ、公平性が保てず、収支も改善しない」(大手損保幹部)と理解を求めている。
しかし、インターネット上ではさっそく「高齢者だけを値上げするのは納得がいかない」などと不満を訴える書き込みが相次いでいる。そもそも、損保業界では2010年4月、再編によって「3メガ損保」体制が確立し、効率化による保険料の値下げなどが期待されていた。
統合効果を早期に発揮し、契約者へメリットを還元しなければ、こうした不満はますます高まりかねず、保険料の割安感からネットや電話で契約する「直販損保」に顧客が流れる可能性も指摘されている。