パチンコ店の入り口に金属探知ゲートを設置する店舗が増えている。外部から大量のパチンコ玉を店内に持ち込む不正行為が横行しているからだ。
射幸心をあおるとして、大当たりが出るスロットが2007年から規制され、それ以降パチンコ業界では客離れによる倒産が相次いでいる。倒産した店舗のパチンコ玉を安価で買い入れ、他の店で使ったり、「1円パチンコ」で買った玉を4円の玉の換金場に持っていったりする不正が起きている。
パチンコ玉2000個をベストの中に隠して入店
金属探知ゲートを発売しているのは茨城県土浦市のパチンコ機器メーカー・オーケープランニング。飛行場や刑務所に設置されている金属探知ゲートの輸入販売業者から、パチンコ店の防犯に役立てられないか、と相談を受けたのがきっかけだった。
輸入業者が扱っているイタリア製の金属ゲートを改造し、08年から販売を開始した。現在導入している店舗は茨城県を中心に40ほどあり、神奈川県や愛知県にも設置されている。2011年からは積極的に全国のパチンコ店に採用を働きかけるという。
パチンコ店がこのゲートに興味を示すのは、パチンコ玉を巡る不正が多発しているからだ。例えば水戸市では2010年4月20日、約2000個の玉をベストの中に隠してパチンコ店に持ち込んだ男が逮捕された。
福岡県川崎町では同年4月23日、別のパチンコ店で借りた1円の玉1万2240個を持ち込み、1個あたり3円の差額を得ようとして精算機に流し込んだ女性が捕まった。
ある大手チェーンによれば、こうした不正が増えたのはパチンコ玉が1円で買え、長く遊べるように設定した、いわゆる「1円パチンコ」が増えたため。
パチンコ玉は他店のものかどうか見分けが付けにくい。そのせいで、4円で売っている店に持って行って稼ごうとするのだ。ここ2、3年パチンコ業界では倒産が相次ぎ店舗が減少。不要になったパチンコ玉を安く買って、換金しようとするケースも増えている。
通過した人の顔、持ち込んだバックなどを瞬時に撮影
法務省の調査によれば、07年に大当たりが出るスロットに規制がかかってからパチンコ店の客が急激に減少。09年の貸玉は95年のピーク時の70%弱の約21兆円に落ち込んだ。店舗数は09年でピーク時の70%弱、約1万2600店に激減している。こうした中で、他のパチンコ玉を持ち込む不正がのしかかった。
パチンコ玉を持った客が金属探知ゲートを通ると、ブザーは鳴らないが、ホールにいるスタッフのイヤホンに連絡が入り、他の客に気付かれないように追跡が始まる。不正がはっきりすれば、その後の対応を考える。
この金属探知ゲートは、通過した全ての人の顔写真と、持ち込んだバックなどを瞬時に撮影する機能を持っている。LANやインターネットに繋いで不審者の写真をどこでも見ることができる。
「実はこのシステム、犯人を捕まえるのが目的で開発したのではありません。証拠が写真で残るため、不正を働くのは無理だと知ってもらい、来店させないようにするのが狙いなのです」
と開発したオーケープランニングの担当者は話す。
もっとも、大手チェーンには不正を防ぐシステムがいろいろあり、店内には監視カメラも設置されている。
「現状の防犯システムには欠点が見当たらない。金属探知ゲートを付ければお客様全てを疑うことになり、失礼になるのではという不安もあります」
と大手チェーンの広報は話している。
オーケープランニングは今後、全国的に金属探知ゲートの販売を始めるが、どれだけ売れるかは予測できないという。