名前も知られ、チャートも上位に入っていたバンドの解散が続いている。この1年でもテレビ出演歴のある有名バンドが複数解散。音楽不況が叫ばれて久しいが、人件費の嵩むバンドは金銭的に特に厳しい状況にあるという。
2011年1月11日、3人組ロックバンド・椿屋四重奏が解散を発表した。中田裕二さん(ボーカル・ギター)と小寺良太さん(ドラム)は今後も音楽を続けるが、永田貴樹さん(ベース)は他の道に進むという。同バンドは2000年に結成され、10年8月に発売された5枚目のアルバムがオリコン最高15位を記録している。
事務所から月5万円、印税も数万円
音楽ファンの間では広く知られたバンドだったが、他にも有名なバンドが最近次々と解散している。この1年だけを見ても、BEAT CRUSADERSやゆらゆら帝国らが解散。どちらもチャート上位に入ったり夏フェスを賑わしていたこともある人気バンドだった。2011年1月には6人組コーラスグループRAG FAIRも活動休止を発表している。
ある音楽事務所のマネージャーは
「時代の流れといった感じがしますね。解散の理由はバンドごとにあるとは思いますが、収入がたくさんあれば、簡単には解散しないと思います」
と語る。CDは依然として売れず、配信も利益率が低い。最近ではメジャーデビューして音楽事務所に所属しても印税以外に収入がないこともあるという。
数年前までメジャーで活動していた30代の元バンドマンも、メジャーデビューが決まったとき、育成費という名目で事務所から貰っていたのが月5万円。印税もあったが数万円で、飲食店でバイトしながら食いつないでいた。
「バンド活動よりバイトの方が多かったくらい。テレビに出るようなバンドは違うかも知れませんが、名前だけ聞いたことあるといったバンドの多くはそんな感じ。メンバーも今は普通の仕事をしています」
スタジオ代も安いし、自宅で録音もできる
音楽評論家の加藤普さんは
「例えば去年紅白にも出た『トイレの神様』の植村花菜だったら1人分の人件費で済むけど、バンドだったら4~5人分かかり、音楽不況で余裕のない事務所にとっては負担が重い。若くていいバンドも幾つか出てきているんですが、最近売れるのは嵐やAKBなどのアイドルばかりですしね」
と、金銭的な難しさを指摘する。
また、事務所からの給料が高くない限り、収入はインディーズの方がましだという。例えば、1000円のCDが3万枚売れて3000万円の売上があったとしても、メジャーで印税10%という契約だったら、バンドには300万円しか入ってこない。しかし、インディーズならインディーズCD専門の販売会社に30%支払ったとしても7割がバンドに入る計算だ。
「今はスタジオ代も安いですし、自宅で録音もできます。だとすると3000万円のうち2000万円ぐらいがバンドに残るわけで、バンドはインディーズが主流になってきています。ただ、CDは今後益々売れなくなるでしょうし、ネット配信も一曲数百円の単位で利益が少ない。これからバンドをやる人は、ネットは宣伝の場と考えてライブで稼げるよう頑張るしかないです。YouTubeから人気が爆発することもあるかも知れません。あと、普通の仕事も続けた方がいいでしょうね」