「ブレーキなし自転車」公道うようよ 道交法違反で罰金のケースが出現

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   ブレーキを装着していない自転車で公道を走ったとして、「赤切符」を切られる例が出ている。自転車と歩行者との事故が激増する中、警察は取締を強めている。中には「ブレーキが前にだけある」のケースでも検挙されることがある。自転車のブレーキを巡る状況は今、大きく変化しているらしい。

   福岡市の若い男性が道路交通法違反(制動装置不良)の罪で略式起訴され、2011年1月12日付で福岡簡裁から罰金6000円の略式命令を受けた。ブレーキを取り外した自転車を公道で運転したためだ。赤切符を切られたが再度運転したという。

ピストバイクと呼ばれる競技用自転車

   「ブレーキのない自転車」として主に知られるのは、ピストバイクと呼ばれる競技用自転車だ。競技用自転車には最初からブレーキがなく、ペダルと後輪の動きが連動する固定ギアで、後退しようと力を入れればブレーキ力が働く。もっとも、ある程度のスピードの自転車を止めるには相当の筋力と技術、経験が必要だ。

   なぜ競技用が公道へ「進出」したのか。自転車事情に詳しいある男性専門家によると、米国で自転車便のメッセンジャーたちが、「自転車のプロ」として競技用自転車を「乗りこなす」ことにファッション性を見出したのがきっかけだ。

   日本へもアメリカのファッションの一部として入って来た。1999年には、人気グループSMAPの草なぎ剛さんらが出演した、自転車便関係者を描いた映画「メッセンジャー」が公開され、若者層を中心に人気が広がった。

   競技用自転車を模したブレーキ付き自転車もあるが、ブレーキ用のワイヤが格好悪いといってとりはずしてしまう人もいるようだ。値段は競技用ならフレームだけ(タイヤやハンドルなどない状態)で20万~30万円のものもあるが、「もどき」なら10万円前後、中古なら4、5万円で買うことができる。3年ぐらい前の一時期、ネットのヤフーオークションで大量に手軽な値段でこの種の自転車が出回り、利用者が増えたという。全国で愛好者がどれだけいるのかは、よく分からないそうだ。

ブレーキは前にも後にも必要

   ブレーキをつけていない自転車に乗っている人たちが、巷にそんなにあふれているのだろうか。実は、「前ブレーキだけはつけている(残している)」という人が相当数いるそうだ。さすがに、完全ノーブレーキで問題なく公道で乗りこなせる人はそう多くはないようだ。

   この「前ブレーキだけ」も、道交法違反(制動装置不良)だ。自転車には、前輪にも後輪にも両方にブレーキがついていなければならない。これは、道交法「63条の9第1項」と道交法施行規則「9条の3」で定められている。

   さらに同規則では、乾燥した平坦な舗装路面で時速10キロのとき、3メートル以内で「円滑に」自転車を停止させる性能も求めている。実は、競輪選手なら、ノーブレーキ自転車でも、後退しようと力をかけて時速10キロなら1メートルぐらいで止めることができるそうだが、これはブレーキ装置とはみなされない。まして普通の人では、3メートル以内でノーブレーキ自転車を止めることはなかなか難しいようだ。

   ややこしいのは、「前ブレーキだけ」に見える自転車の中にも、後輪に「コースターブレーキ」というハンドルのレバーやワイヤがない、外から素人が見ても分からないブレーキもあることだ。警察官に何度コースターブレーキを説明しても理解してもらえず、違反だとして切符を切られたが、後に警察側が撤回した。そんなことを警察関係者から聞いたことがある、と話す人もいる。

10年間で事故3倍以上

   警視庁や福岡県警などによる「ノーブレーキ」に関連する摘発報道が散見されるようになり、個人ブログなどで反発する愛好家もいる。確かに運転が下手な人はノー(もしくは前だけ)ブレーキ自転車に乗るべきではないが、自分は上手だし無謀運転はしないので大丈夫だ、自己責任の範疇で放っておいてほしい、といった訴えもある。

   財団法人「日本サイクリング協会」では、「そうした愛好家の考えを完全に否定する気はないが…」としつつ、「やはりルール、法律は守りましょう」とブレーキを前後輪につけることを呼びかけている。「自分は事故を起こさない」という自信過剰な人も少なからず事故を起こしており、結果としてきちんと前後ブレーキをつけているスポーツバイク(自転車)ファン全般に冷たく厳しい視線が車・運輸関係者らから向けられつつある現状もあるという。

   警察庁が10年にまとめた「(09年の)交通事故の発生状況」によると、自転車関連事故のうち、相手が歩行者のケースは、1999年には801件だったのが、2003年に2000件を超え、09年には2900件超と3000件に迫る勢いだ。10年間で3倍以上に増えている。09年は4件の死亡事故(自転車対歩行者)が起きている。

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