ハイリスク・ハイリターンで「プロ」向けの金融商品だったデリバティブ取引が、個人投資家にも浸透してきた。大阪証券取引所のデリバティブ市場で取り扱っている、個人投資家向けの「日経225mini」は、2010年の年間取扱高が1億2511万枚(概算)で、前年に比べて19.5%増えた。
一方、東京金融取引所(TFX)の「くりっく株365」は2011年1月22日でスタートから2か月になる。先物取引でありながら、金利や配当の受払いがあるので「長期投資にも向いている」と、人気のようだ。個人投資家が「リスクをとれるようになってきた」とみる向きもある。
大証「日経225mini」の売買が2年連続で1億枚超
大証が取り扱う「日経225mini」の2010年の売買状況は、2年連続で1億枚を超えて、4年連続で過去最高を記録した。大証のデリバティブ取引には、先物取引の「日経225先物」や「日経300先物」、オプション取引の「日経225オプション」などがあるが、いずれの取引金額も前年を下回っていた。
日経225miniの取引高は、11月が997万枚、12月は777万枚と落ちたが、5~10月にかけては1000万~1300万枚で推移していた。
日経225miniを取り扱う、ある証券会社は、「2010年11月頃から株価が好転しはじめ、足下の取引は減っています。利用者には株の信用取引をしている人が少なくなく、日経225miniは『現物が下がったときでも儲けることができる』と注目されたようです」と話している。
また、別の取り扱い証券会社は、「日経225先物の小口版ということで、認知度も上がってきた」ことが取引高の増加につながったとみている。
一方、取り扱い証券の一つであるマネックス証券は2011年3月末まで、「日経225 先物・オプション取引 デビュー応援キャンペーン」を展開。「日経225mini」などの取引を行う口座を新規開設すると、その後の31日間の取引手数料を全額キャッシュバックするもので、個人投資家の先物取引の利用拡大を期待する。
「取引限月」がなく長期投資に向いている
東京金融取引所(TFX)の取引所取引「くりっく株365」は、大証の「日経225mini」と同じデリバティブ取引。レバレッジ(テコの原理)を効かせて、少ない元手で投資効率を上げる差金決済(CFD)の仕組みを使っている点も同じだが、値段の刻みが1円単位(大証は5円単位)だったり、ロスカットルールがあったり(大証にはない)といった違いがある。
さらに日経225miniにある、先物取引特有の「取引限月」がないのが特徴。それによって金利や配当の受払いが発生する。
TFXでは、「通常の先物取引だと、3か月ごとに限月を迎えることになり、そのたびに決済が必要になります。くりっく株365ではそういった期限がないので、長期投資に向いているともいわれます」と話している。
また、マネックス証券は「終日、海外の株価指数をみながら取引できることが魅力。取引所取引という安心感もある」という。
「くりっく株365」は「日経225」のほか、DAX(ドイツ)やFTSE100(英国)、FTSE中国25などの海外株価指数に連動する商品も取り扱っている。取引の大半が「日経225」だが、全体の取引数量は2010年12月末までに6万7691枚、1日あたり平均2507枚だった。