就活中の学生らが自宅でも受験できる各企業のウェブテストに対し、「東大生の代行」をうたったネットサービスができて、物議を醸している。このほかにも替え玉受験のケースが報告されているが、なぜこんなテストをするのか。
「現役東大生のウェブテスト代行」のサイトには、東大のシンボルとなる赤門や安田講堂の写真が大きく掲げられている。そこにあるのは、こんなうたい文句だ。
学生から不正の可能性に不信の声
「結果はもちろん一目瞭然、どんな企業も突破します。さぁ一緒に最高の内定を手に入れませんか??」
このところ、各企業の新卒採用では、エントリーシート記入のほかに、数学・語学力や性格などをみるウェブテストを行うところが増えている。テストセンターや各企業が会場となる場合もあるが、自宅などでできるテストも多い。未曾有の就職難ともあって学生たちもなんとか内定を得ようと必死で、そこに目を着けたのがテスト代行業らしい。
「東大生の代行」サイトでは、いくつもの有名企業に内定した現役東大生が1件当たり1律に1万円でテスト代行を請け負うとうたっている。内定者からという感謝の声もいくつか掲げられており、代行実績は1000人以上などと書いてある。
代行と言えば聞こえはいいが、「なりすまし」や「替え玉受験」といえなくもない。ウェブテストは、自宅などでもできるとあって、学生らから不正がある可能性に対して不信の声も出ている。
朝日新聞に2010年3月8日に載った投書では、東京都内の大学生(22)が、大学のパソコン室で1台のパソコン画面を数人が取り囲み、受験者を手伝う光景は珍しくないと訴えた。数学は理系の学生に、英語は留学経験者に、という分業ができているという。また、読売新聞の09年3月30日付投書でも、都内の大学生(21)が、「計算問題が得意な友人は知人に替え玉受験を頼まれたと話していた。これでは正直者はバカを見かねない」としている。
各企業「面接で見抜くことができる」
かつては、有名私大の学生がブログで不正を告白し、コメントが殺到する炎上状態になったことがある。
替え玉が横行するようなら無意味とも考えられなくもないが、各企業は、それでもなぜウェブテスト導入を続けているのか。
数年前からテストを実施しているある大手建設会社では、広報担当者が替え玉受験の可能性は認識しているとしたうえで、その理由をこう説明する。
「面接官には専門家もいるので、不正なことをすれば、面接で見抜くことができます。しかし、ウェブテストに頼ったり、重要視したりしていることはなく、要は多面的に人物を見る1つの指標ということですよ」
性格診断テストを数年前から導入している大手損保会社では、次のように言う。
「就職予備校の指導で、本当とは違う性格を記入する可能性も確かにありますが、こうしたことは面接の中で分かってきます。正誤を問うものでも正解があるものでもないので、自宅でやってもらうことにも心配していません」
一方、学生らはウェブテストをどうみているのか。
有名私大出身のある会社員男性(23)は、企業の狙いについて、「替え玉の例は多いと思いますよ。むしろ、テストに協力してくれるいい友人がいるかどうかを企業が見ているのではないか」と皮肉な見方をする。ネット上では、企業が大量の志願者を切る口実に使っているのではないか、コストを安くするための苦肉の策ではないか、との指摘もあるようだが、はっきりしていない。
ちなみに、前出の「東大生の代行」サービスは、ネット上で、東大生の学生証を無断で転載された、愛犬しつけ法のサイトを援用している、といった指摘が出ている。J-CASTニュースでは、サイトにあるメールアドレスを通じて取材を申し込んだが、まだ回答は来ていない。