パソコン市場で国内首位のNECが中国のパソコン最大手のレノボ・グループと、パソコン事業で提携交渉を進めていることがわかった。NECは「内容について決定した事実はない」としているが、NECの100%子会社であるNECパーソナルプロダクツに、レノボが過半を出資することで合弁会社を設立する、とされる。
パソコン市場は販売価格の下落も激しく、ますます「薄利多売」の消耗戦だ。NECは今後の事業の軸足を、クラウドコンピューティングなどの情報システムサービスの提供に置いていて、この分野に経営資源を集中したい。合弁といっても、NECの子会社にレノボが出資することになるので、「事実上の切り売り」という辛辣な見方もある。
NEC国内も苦戦 ビジネス需要の確保がポイント
NECとレノボの事業提携について、IT市場調査のIDCジャパンのアナリスト・片山雅弘氏は、「全貌が判明していないのでわからない点が多いが、双方の狙いがはっきりしない提携だ」と話す。
NECのメリットの一つは、レノボの部品調達力を活用して生産コストを抑え、コストダウンで競争力を高めること。
ところが、肝心の国内シェアが揺らいでいる。IDCによると、2009年の国内シェアのトップはNECで約245万台の18.3%。富士通が約239万台の17.9%で迫っている。3位はデルの12.1%で161万台だった。
それが2010年第2四半期(4~6月期)だけでみると、富士通がNECを抜いて首位に躍り出た。「このところ両者は常に競っている」(片山氏)状況ではあるが、富士通の追撃に、すでに尻に火がついている。
国内パソコン市場は、ビジネス向けが52%、コンシューマー向けが48%を占める。最近はスマートフォンや、iPadのような「タブレット型」が人気なので、コンシューマー向けは期待薄だ。前出の片山氏は、「レノボがIBMのパソコン事業を買収したとき、官公庁需要が落ちたことがありました。この提携でも、NECがビジネス需要を確保していけるかがポイントです」とみている。
レノボにメリットあるのか
レノボの狙いは、NECよりわかりづらい。一般に、M&Aやジョイントベンチャーの設立となるとシェアアップが狙いだが、世界シェアでレノボはNECと組んでも「4番手」のままで変わらない。
IDCジャパンによると、パソコン出荷台数の2009年の世界シェアで、レノボは約2490万台の8.2%で第4位。NECは約260万台の0.9%で12位だ。「NEC+レノボ」は9.1%となる。
上位には、首位が米ヒューレット・パッカードの約6000万台の19.7%。これに、米デル・コンピュータと台湾のエイサーが約3841万台の12.6%と続く。
そもそも、NECのパソコン事業は2000年に米国から撤退し、09年には海外市場から完全に退いている。レノボが期待できるのはNECの販路を活用した、日本国内でのシェア拡大だろう。レノボの日本でのシェア(09年)は4.6%の61万台で8位。しかし、合弁会社で新たなブランドを立ち上げるなど、事業を1本化しなければ、シェアの食い合いになるだけだ。NECにとってもメリットは薄い。
レノボにとって、日本市場はそんなに「おいしい」市場に見えるのだろうか。