2010年の国内普通トラック販売でいすゞ自動車が日野自動車を抜いて1972年の業界統計開始以来、初のトップに立った。日野の連続首位記録は37年連続でストップした。
いすゞは近年、激しく日野を追い上げており、ついに悲願のシェアトップを実現した格好だ。いすゞは1960年代に首位だった時期があると見られるが、明確な統計が出来てからは初の首位となる。
21世紀に入って自動車関係で首位交代相次ぐ
普通トラックは積載量4トンクラスの中型トラックと、5トン以上の大型トラックの合計。いすゞは16,889台を販売し、16,827台の日野を62台差でかわした。最終日前日の2010年12月27日時点では日野がリードしており、最後の最後にいすゞが大接戦を制した。前半に走ったいすゞを日野がいったんは捉えたものの、いすゞがチャンスをものにした。
一般の自動車ユーザーには縁遠いが、大型車メーカーやディーラーは歴史的な首位交代と捉えている。実は、21世紀に入って自動車関係では首位交代が相次いで起きている。2002年はホンダ「フィット」が快走し、大衆車の代名詞であるトヨタ「カローラ」から車名別首位(軽自動車を除く)の座を奪い取った。2006年度(06年4月~07年3月)にはダイハツ工業がスズキを軽自動車トップの座から引きずりおろした。奇しくもいずれの「連勝記録」も33年連続でストップしている。
業界で「一番暴れている」のはいすゞ?
日野の連続首位は「カローラ」、スズキよりもさらに長く37年に及んだ。得意とするのは長距離を走る大型トラックで日本通運、西濃運輸など運輸業界の大手に強く、トヨタグループでもあることから強い顧客基盤を誇ってきた。一方、いすゞは「エルフ」で知られる小型トラックで圧倒的なシェアを持ち、普通トラックはダンプカーなど建設用途が主力だった。
公共工事の縮小で建設業界向けが縮小すると、運輸業界向けを強化。1990年代に日野を脅かした二番手の三菱ふそう(三菱自動車)が2000年のリコール隠し発覚などで評判を落とすと、次々と顧客を奪い毎年シェアを上げた。いすゞは中東やアジアなど海外で稼いだ収益を国内の販売費につぎこんだとも言われ、業界では「一番暴れている」と囁かれた。「暴れる」とは値引き販売のことを指す。
日野といすゞはディーゼルエンジンの排ガス浄化装置を共同開発し、バス事業を折半で運営する間柄にある。いすゞもトヨタの出資(5%)を受けており、一時は日野・いすゞの両社が開発や生産で全面的に組む話もあったが今はその機運は薄れている。国内市場は成長こそ望めないが「首位」の勲章は大きい。まずは2010年度で日野が返り咲くか、いすゞが維持するかが焦点になる。