「区長選を前にヘタに動けない」
これに対し大田区も翌日に「大田区に帰属すべきもの」との意見書を出した。埋め立てられた海の「既得権」を訴えるもので、大田区内の漁協が持っていたのりの養殖の漁業権を放棄した経緯を指摘。また、埋め立て地は陸海空運の拠点として羽田空港と一体的に活用するためにも「空港と同じ大田区に帰属するのが合理的」と譲らない。
東京湾の埋め立て地の帰属では、お台場を中心にした臨海副都心を江東、品川、港区が争い、都の自治紛争調停の末、1982年に3区に分割したことがある。
今回のバトル、どちらに軍配があがるのか。これまでの経緯から総合すると、「江東区に分がありそう」(都政関係者)との見方が出ている。暫定的ではあるが、建築確認申請などの事務を担当し、住所表記も「江東区青海3丁目地先」で、郵便物も届くからだ。同区は「すでに江東区として認知されている」と自信を見せる。
地方自治法では、埋め立て地の帰属は、都が「できる限りすみやかに」に確定することになっている。ただ、都としては「両区からの紛争調停の申請がない以上、協議を見守るしかない」。特に、区長選を控える微妙な時期。山崎孝明江東区長(67)、松原忠義大田区長(67)はともに区議、都議を経て区長1期目のたたき上げという似た経歴。いずれも今回の紛争再燃後の2010年秋に再選出馬を表明済みで、「区長選を前にヘタに動けない」のは共通。勝負は選挙後になりそうだ。