大阪証券取引所が米ナスダック市場などを運営するナスダックOMXグループと、夜間取引などが可能な新市場を2012年にも創設する。
ナスダックと大証は2000年5月、新興企業向け市場「ナスダック・ジャパン」を開設したが、当時のITバブルの崩壊などで行き詰まり、2002年10月に提携を解消した経緯がある。
韓国や中国の新興市場の猛追を受ける大証
10年ぶりとなる今回の再上陸は、国内では東京証券取引所の影に隠れ、アジアでは韓国や中国の新興市場の猛追を受ける大証が、ナスダックの知名度を呼び水に、投資マネーを呼び込むのが狙いだ。それだけに安易な失敗は許されず、真価が問われる再上陸となりそうだ。
大証は2010年10月、旧ジャスダックとヘラクレスを統合し、アジア最大規模の新興市場となる新「ジャスダック」をスタートさせたが、株式市況の低迷が続き、注目度はいまひとつ。アジアではジャスダックと並ぶ市場規模を誇る韓国取引所の「コスダック」や、中国の新興市場「創業板」が上場企業数と時価総額で規模を拡大している。このため大証の焦燥感は強く、「新ジャスダックにとどまらない次の一手」(市場関係者)として、ナスダックの活用策が浮上したようだ。
大証はナスダックの日本撤退後も、海外の証券取引所との提携を模索してきた。米欧の証券取引所は2006年以降に国境を超える再編が進み、東証がニューヨーク証券取引所(NYSE)などと戦略的に提携。これに対抗する形で、旧ジャスダック証券取引所がナスダック・ストック・マーケット(当時)と業務提携した経緯もあり、結果的に大証は2009年2月に現在のナスダックOMXグループと業務提携し、「復縁」を果たす格好となっていた。
取引時間拡大で海外投資マネー呼び込めるか
今回のナスダックの日本再進出についてはナスダック側が10年夏、大証に打診したのがきっかけという。大証の米田道生社長が10年12月、ナスダックのロバート・グレイフェルド最高経営責任者(CEO)と米国で会談し、2011年2月から本格的な協議を開始することで合意した。年明け4日の大証の大発会で、米田社長は「内外の取引所とも積極的に連携し、存在感のある取引所を目指したい」などと発言。ナスダックとの新市場創設に意欲を見せた。
しかし、ナスダックの名を冠すとみられる新市場のイメージは明確でない。新市場は、①現行の大証1、2部、ジャスダックとは別に、これらに上場する銘柄を幅広く売買できるようにする②大証とナスダックOMXグループが共同で運営会社を作り、東証に上場する銘柄も取引できる「私設取引システム(PTS)」を運営する――などの案が検討されているが、現行のジャスダックとの棲み分けも明確でない。
大証は夜間まで取引ができるよう、新市場の運用時間を拡大し、投資家の利便性を高める方針だが、果たしてナスダックのブランド力や取引時間の拡大などで海外からの投資マネーを呼び込めるか。大証とナスダックOMXグループは今後、具体的な協議を進めることになるが、10年ぶりとなる大証・ナスダック連合のリベンジだけに新機軸が求められるのは言うまでもない。