資生堂の新社長に、末川久幸取締役・執行役員常務の就任が内定した。2011年4月1日に正式に就任する。現在18人いる執行役で、外国人を除くと一番若い51歳(就任時は52歳)。役員の序列では5番目に付けていたが、異例のスピード出世でトップに就く。
資生堂といえば、福原義春名誉会長や前田新造社長が慶応大出身のためか、「慶応色」が強いように思われるが、前田社長の前任だった池田守男元社長が牧師やキリスト教学校で働く教師の養成を目的とする、日本基督教団立の東京神学大学の出身。末川氏は国際商科大学(現・東京国際大学)の卒業と、慶応大や早稲田大学、東京大学、日本大学といった大学出身者が目立つグローバル企業にあっては異色の存在だ。
12歳若返るスピード出世
資生堂の第14代社長に就任する末川久幸氏は1982年に入社の生え抜き。化粧品専門店の営業担当を皮切りに、営業担当の研修や化粧品事業の戦略立案などの国内化粧品事業を経験。2007年には事業企画部長、08年には執行役員経営企画部長に就任し、前田新造・現社長の「参謀役」として経営の舵を取ってきた。
米化粧品大手のベアエッセンシャルの買収に携わり、また2011年度からの中期経営計画の策定でも中心的な役割を担った。
2005年に、業績が低迷していた資生堂の立て直しのため就任した前田社長は代表権のある会長に就任する。前田社長自身が定めた「最大6年」という任期の上限を守り、新年度からは一気に12歳若いトップにバトンを譲る。
前田社長は、「変化の激しい経営環境ではスピードと行動力が必要」と、末川氏抜擢の理由を話す。
祖父、父母、妻も資生堂勤め
末川氏は「資生堂一家」に育った。祖父はかつて資生堂で専務を務め、父母と妻も同社に勤務していた。
ある社員がこんなエピソードを教えてくれた。
「出張先の化粧品専門店で、店主に『お父さんにお世話になった』と言われことを話していました。かなりうれしかったようですね」
末川氏自身は「恩返しのつもり」で入社したと振り返る。
池田元社長はコーポレートコミュニケーション本部長や化粧品事業総本部長を歴任。前田社長も社長就任前は経営企画部長で、末川氏も同じ道を歩んできた。
新社長に就く末川氏をひと言で表わすと「ブレない人」というのが社内の評判だ。だからといって「頑固おやじ」というわけではなく、「人の話に耳を傾けては吸収していく柔軟性がある人」という。
末川氏は「前田社長の改革をさらに進め、『日本をオリジンとし、アジアを代表するグローバルプレーヤー』をめざす。資生堂を世界の中でより存在感のある会社に磨きあげていきたい」と抱負を語った。