菅直人首相が2011年1月14日に予定している内閣改造をめぐり、動きがあわただしくなっている。「民主党に政権を任せれば日本は終わり」だと主張していた「立ちあがれ日本」の与謝野馨共同代表が離党届を提出、政府の要職につく公算が大きくなっている。与謝野氏は、自民党時代から「財政再建重視派」として知られており、改造後の政権は消費税増税に動く可能性が高い。
大臣として入閣か首相補佐官
立ちあがれ日本をめぐっては、民主党が連立入りを打診したが、議員総会で反対が相次いだ結果、連立話は「破談」になっていた。与謝野氏が連立に前向きな一方、平沼赳夫代表は、消極的だったとされる。
そんな中、与謝野氏は11年1月13日午前になって、平沼氏に離党届を提出。午後に開かれた議員総会で、離党届が受理されることになった。翌1月14日の内閣改造では、与謝野氏は大臣として入閣するか、首相補佐官などの政府要職に就任するものとみられている。
与謝野氏は自民党時代から、消費税引き上げを求める「財政再建派」として知られており、経済成長を重視する「上げ潮派」の中川秀直元幹事長との対立が話題になったこともある。
与謝野氏は、立ちあがれ日本に離党届を提出した直後の記者会見の中で
「菅総理が言われている財政再建、税制の抜本改革、社会保障制度の持続性の確保、これはいずれに日本の社会が、どうしても避けて通れない喫緊の課題であると思いますし、私がお手伝いできることがあれば陰ながらお手伝いしたいと思っている」
と、これまでの立場を繰り返した。
1月13日午後の党大会後に行われた記者会見で、菅首相は1月14日に内閣改造を行う方針を明らかにした上で、与謝野氏の起用については
「与謝野さんの去就については、ご本人の判断で活動されてるわけでありまして、そのことについてコメントは控えたい」
とはぐらかしたものの、過去に菅首相が与謝野氏の政策を批判していたこととの整合性については、
「財政健全化のあり方、社会保障のあり方に熱心な方であり、そういうところでは、民主党の考え方としては、かなり共通性の高い政治家だと、これまでも、今でも認識している」
と釈明。政権での活躍への期待感を隠さなかった。
年初会見で「増税論議」解禁の意向示す
民主党は、09年のマニフェストでは、16兆8000億円の財源を捻出するとしていたが、実際に捻出できたのは3兆9000億円。この状況を受けて、10年夏参院選向けのマニフェストでは「消費税を含む税制の抜本改革の協議」を盛り込んだが、これが惨敗の一因となった。このため、しばらく消費税増税の議論は事実上「封印」されてきた。だが、11年1月4日の会見では、菅首相は
「社会保障の在り方と、それに必要な財源を、消費税を含む税制改革を議論しなければならないという、そのことは誰の目にも明らか」
と、議論を「解禁」する意向を示したばかりだ。今回の与謝野氏の人事で、この議論が加速することは明らかだ。
だが、党内から反発の声があがるのも、確実な情勢だ。例えば、党大会で議事進行中に立ち上がって発言を求めたが、発言を許されなかった森ゆうこ参院議員は、ツイッター上に、
「与謝野氏は市場原理万能、財政再建至上主義の自民党の経済政策司令塔である。すでにそうなっているとも言えるが、このまま大増税路線を進むようなら完全にマニフェスト違反」
と、執行部に対する怒りをぶちまけている。