自らが乗っ取った電機部品メーカーの資金を、自らが元々経営する会社に無担保で融資して焦げ付かせたとして、元会社社長の男ら3人が逮捕された。男は、逮捕数日前に民放テレビ番組に出演。番組では乗っ取りの様子が明かされていた。
会社法違反(特別背任)の容疑で2011年1月12日に警視庁に逮捕されたのは、東証2部に上場していた電器備品メーカー「春日電機」=会社更生手続き中=の元社長、篠原猛容疑者(53)ら当時の役員3人。
約5億5000万円を焦げ付かせる
篠原容疑者は04年に精密機器会社「アインテスラ」を設立し、同社が春日電機株を買い進めた結果、08年6月に行われた株主総会で篠原容疑者が春日電機の取締役に就任。その後の取締役会で社長に就任し、篠原容疑者が事実上春日電機を乗っ取った。
その後、春日電機は08年6月から7月にかけてアインテスラに対して計約5億5000万円を融資。篠原容疑者は、この融資で春日電機に損害を与えた疑いが持たれている。
実は逮捕された篠原容疑者は、逮捕2日前の11年1月10日夜に放送されたTBS系のニュース番組「ニュース23X(クロス)」で、乗っ取り時の様子や、今回逮捕された容疑、社長辞任後の近況などを明かしていた。
株主総会で「なんでしたら、議長代わりましょうか?」
番組では、08年6月の株主総会の録音が登場。録音には、議長をつとめる創業家の社長が
「続きまして、決議事項の議案の…」
と進行しようとすると、篠原容疑者が
「動議!本日の決議事項について、修正動議を提案いたします」
と声をあげる。議長が
「この動議の候補者の変更につきましては、これは許されないと考えておりますので、この動議については却下させていただきます」
と抵抗しようとすると、
「どういうことでしょうか。なんでしたら、議長代わりましょうか?」
と、すごんでみせる様子が収められている。
さらに、会社乗っ取りからわずか半年後の08年12月のインタビューでは、問題の融資について
「それが背信だ、背任だ、横領だって言われたら、それはしょうがない」
と開き直り、記者が
「その責任はとる?」
と聞くと、
「現実、そうだから」
と話した。
この直後の08年12月26日、篠原容疑者は融資の責任を問われ辞任。09年2月に春日電機株は上場廃止となり、春日電機は09年4月、篠原容疑者を特別背任容疑で警視庁三鷹署に告訴していた。09年6月には会社更生手続きを申請し、現在は新会社で事業が継続されている。
前出の「ニュース23X」によると、篠原容疑者は、かつては13台の高級外車を所有し、ミラーボール付きのカラオケルームを備えた豪邸に住んでいたが、保有していた春日電機株の暴落で全資産を失ったという。