10年度は前年の4倍8400人を正社員化
日本郵政グループと人件費というキーワードで思い出されるのは、10年3月に当時の亀井郵政改革相がぶち上げた「非正規社員の正規登用」方針だ。規模について「10万人が上限」との見方を示したこともあった。当時、「人にやさしい政治」と評価する向きもあったが、「『民営化』企業の経営をしばるだけの愚行」との反発もあった。
同グループは亀井発言前から、勤続年数などの条件を満たした月給制契約社員について審査の上、正社員化を実施していた(09年は約2200人が合格)が、10年は対象を時給制契約社員にも広げ、計約8400人(うち、日本郵便は約6500人)と前年の4倍近い人数が合格した。応募者は計約3万4000人だった。
日本郵政によると、11年度も日本郵便を含め10年度と同様の対象で正社員登用を募る予定だ。合格者の人数規模は未定で、「人数枠を最初から決めるものではなく、応募があった中から審査の結果どうなるかだ」と説明している。日本郵便が新卒採用をやめる12年度については、実施するかどうか未定という。
朝日新聞(11年1月12日付)も記事で指摘するように、日本郵便は12年度に新卒を採用しない分、非正規社員を増やして対応することになる。ということは、非正規社員の相当数を正社員化したが、人件費コスト削減に迫られ、新卒採用を中止しその分また非正規社員を増やすという迷走が始まっていることになる。
日本経済新聞記事(1月12日付)は、新卒採用中止について、「社員の年次構成が偏り、業務知識の継承にも支障が出る」と指摘、「既存社員のリストラにも踏み込まなければ、若年層にしわ寄せがいくだけになりかねない」と懸念を示している。