本業黒字、デリバティブで倒産 こんな中小企業が相次いでいる

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   為替変動によるリスクを避けるため、銀行から「為替デリバティブ」と呼ばれる金融商品を購入した中小企業が、急激な円高で逆に損失を膨らませ、倒産に至るケースが相次いでいる。

   企業からは「購入を断れば、融資が受けられなくなると思った」との苦情も多く、金融庁は全国の銀行の実態調査に乗り出した。取引銀行としての立場を利用した勧誘がなかったのかが問われそうだ。

デリバティブによる倒産は2010年で20件以上

   信用調査会社の東京商工リサーチによると、為替デリバティブによる損失が原因の企業倒産は、2010年1~11月末に計20件発生し、前年の約3倍に達している。10年末、破産を申請した関東の衣料品販売会社は、為替デリバティブの損失が約5000万円に上り、仕入れ代金が払えなくなって事業継続を断念した。本業が黒字なのに、デリバティブの損失のために資金繰りに行き詰まるケースが増えているという。

   為替デリバティブは、為替レートの変動による損失を防ぐため、企業が事前に決めておいた為替レートでドルを買うことができる商品。07年ごろまでは1㌦=100~120円台の円安水準での契約が多かったとみられる。

   ところが、08年秋のリーマン・ショック後、急激な円高が進み、1㌦=80~90円台が定着。企業は不利なレートでドルを買わなければならなくなる。契約時点より円安になれば利益が出るが、円高では多額の損失が発生するため、購入した企業の損失が膨らんだ。中途解約すれば、多額の違約金が発生する。

優越的地位の濫用にあたる販売なかったか

   全国銀行協会のあっせん委員会も前年を上回る件数を受理しており、解約金を銀行が一部負担するといった形で和解が成立した事案もある。奥正之・全銀協会長は10年末の会見で「苦情が増えているのは事実。各銀行が親身になって個別の案件に臨むことが求められる」と指摘した。

   全国の銀行の調査に乗り出した金融庁は、各行の報告を受けて内容を精査している段階だ。販売時の説明は徹底していても、中小企業がメーン銀行の勧誘を断りきれなかったケースが多いともいわれ、「優越的地位の濫用にあたる販売がなかったか、精査する」(幹部)。ただ、独自の経営判断に基づいて、デリバティブで利益を上げている企業があるのも事実で、問題事案を慎重に見極める方針だ。

   苦情が増え始めた2年ほど前から、無理な勧誘をしないよう徹底した銀行も多く、ある大手行幹部は「今は改善されている」と強調する。銀行業界は、金融庁の調査結果公表を、固唾を飲んで見守ることになりそうだ。

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