1.3兆円の負債(借金)を抱え、自力再生が不可能な関西国際空港(関空)を支援するため、黒字の大阪(伊丹)空港と経営統合する政府の救済案が具体化に向けて動き始めた。
国土交通省は関空、伊丹両空港をひとつの運営会社に統合するとともに、関空の借金と土地を管理する「関空土地保有会社」を設立し、借金の大半を引き継がせる案を示した。関空の借金を切り離して塩漬けにするとともに、関空と伊丹を効率よく運営し、その儲けから借金を返済するという奇策に他ならない。
運営権売却益で借金を全額穴埋めする皮算用
最終的には関空と伊丹の運営権を民間に売却し、借金を穴埋めするシナリオだが、国交省は運営権を最大1.3兆円と試算しており、負債額に匹敵する。リニア中央新幹線が2045年に東京~大阪を結べば、現在は黒字の伊丹空港の収益が激減する可能性もある。そんな空港を買う企業など本当に現れるのか。楽観的な政府の救済案を疑問視する声もある。
政府は関空と伊丹の統合に向けた関連法案を2010年1月開会の次期通常国会に提出する。法案のポイントは、関空と伊丹の運営権と土地保有を分離することにあり、2012年4月に政府が100%出資して設立する「統合事業運営会社」と「関空土地保有会社」の2社体制にする。
現在の関西国際空港会社が抱える約1.3兆円の借金(有利子負債と無利子負債の合計)は運営会社が約4000億円を引き取るが、残る約9000億円は保有会社が管理することになる。関空土地保有会社に運営会社が支払う土地の賃料が借金の返済分となり、政府の認可制となる。
国交省が最大1.3兆円と試算した関空と伊丹の運営権は、民間企業に一括または50年間の分割払いで売却する予定だ。売却益で借金を全額穴埋めする皮算用で、運営会社は自立した経営が可能になるとのシナリオを描いている。
自治体と経済界は売却の実現性について懸念表明
国交省は2010年12月21日、経営統合の法案などを大阪市内で地元自治体や経済界に提示した。地元自治体と経済界は経営統合した後の収支予測や運営権を民間に売却する実現性について、国交省から具体的な説明がないことに懸念を表明した。国交省は「国が肯定した数値を外部に出すのは適当でない」などと反論した。
一方、関空は毎年度、政府から生活保護費に当たる「補給金」の支給を受け、単年度の黒字を確保するなどしている。2011年度政府予算の概算要求で、関空会社の補給金は概算要求の75億円通り、満額計上されたが、2012年4月の関空と伊丹の経営統合に向けた統合準備費は、要求11億6000万円に対して10億1300万円にとどまった。財務省は予定通り関空と伊丹の経営統合が進めば、関空の補給金を将来的に廃止し、民間空港として自立採算の正常化を図る方針だが、果たしてシナリオ通りに再生が進むか。残念ながら、残された現実の課題はあまりに大きい。