キリンやサントリーも飲料を中心に海外事業拡大
円高傾向も後押しし、ビール各社の海外M&Aは進んでいる。2010年8月、アサヒは豪州飲料3位の「P&Nビバレッジズ」の買収(約270億円)を決定。2009年には同2位の「シュウェップス・オーストラリア」を770億円で買収しており、2、3位連合で首位のコカ・コーラグループを追撃する構え。またアサヒは2010年9月末、中国食品・流通最大手の頂新グループに6.5%(約440億円)出資することも発表した。
キリンは2010年7月、シンガポールとマレーシアで飲料最大手のフレイザー&ニーヴ(シンガポール)に14.7%(約850億円)出資することを決定。
2009年秋に約3000億円かけて仏飲料大手「オレンジーナ・シュウェップス」を買収したサントリーホールディングス(HD)も2010年末、米果汁飲料大手「サニー・ディライト・ビバレッジ」の欧州事業を数十億円での買収を決めるなど、飲料を中心に海外事業拡大に余念がない。
ただ、手当たり次第に買う状況ではない。2010年11月に仏ダノンが「エビアン」「ボルヴィック」などのミネラルウォーター事業売却を日本のビール大手と交渉中、と米紙が報じたが、各社とも「規模が大きい一方、利益が出るかどうか」(大手の1社)と買収には慎重だ。買収先の選別眼をどう育成し、買収企業をどう育てるか。国内の消耗戦に明け暮れてきたビール各社にとって経験の蓄積が薄いビジネス感覚を磨く必要に迫られている。