常勝アップルに忍び寄る危機 「過去の失敗」繰り返すのか

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   世界的に需要が急増しているスマートフォン(多機能携帯電話)の市場で、米アップルの「アイフォーン(iPhone)」が占めてきたシェアトップの座を、米グーグルが開発した基本ソフト(OS)「アンドロイド」の搭載機が脅かしている。米国では、新規購入分に限ると既にアンドロイド機がアイフォーンを上回った。国内でも、アンドロイドモデルが冬商戦から本格的に登場している。

   かつてアップルはパソコン(PC)市場で優位に立ちながら、米マイクロソフト(MS)に逆転された。「苦い過去」は繰り返されるのか。

「OSは搭載されるハードの数を拡大したところが勝つ」

アンドロイドに猛追されるiPhone
アンドロイドに猛追されるiPhone

   調査会社MM総研によると、国内の2010年4~9月期のスマートフォンシェアはアップルが6割を占めた。だが、韓国サムスン電子製の「ギャラクシーS」やシャープ製の「IS03」といった人気のアンドロイドモデルが投入されたのは10月以降。2011年はアップルのシェアが低下するのは間違いない。

   アップルは事業戦略上、他の携帯端末メーカーがアイフォーンのOSを使うことを許さない。一方アンドロイドはオープンソースで、グーグルが無償で提供している。メーカーは独自OSを開発する必要がなくコストを抑えられるため、国内外の主要メーカーが続々とアンドロイドを採用し始めた。

   この点について経営コンサルタントの大前研一氏は「週刊ポスト」の連載の中で、アップルのスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)が、「今まさにパソコンのMac(マッキントッシュ)と同じ失敗を繰り返そうとしているように見える」と指摘した。アップルは1980年代、独自開発のOSを搭載したPC「Mac」を市場に投入し、ヒットさせた。だが自社生産にこだわったため、シェア拡大には限界があった。その後、MSのOS「ウィンドウズ」が登場すると、有力なPCメーカーは次々とウィンドウズ搭載PCを発売。アップルはPCのシェア争いで逆転されて業績は低迷、ジョブズ氏は一度社を「追放」され、事業売却の話も飛び出したほどだった。

   大前氏は、アイフォーンが「Mac」の二の舞になることを懸念。「OSは搭載されるハードの数を拡大したところが勝つ」とし、アイフォーンがアンドロイドに勝つにはOSを誰でも自由に使えるようにすべきだと主張する。

ジョブズ氏「アンドロイドは利用者混乱させる」

   大前氏と同様の考えは、米国でも見られる。ニューヨークタイムズ(NYT)は2010年10月18日の記事で、アップルがPC競争でMSに敗れた過去を引き合いに出し、「このままいけばアンドロイドは、スマートフォン市場でアイフォーン(のシェア)に1年とたたないうちに追いつくだろう」との専門家の言葉を引用。また、自前主義を貫く「閉鎖的」なアップルがアイフォーンの新型機を市場に出すまでに1年かかる間に、オープンソースのアンドロイドは各メーカーが追加機能をいくつも開発するだろうとしている。

   アンドロイドとアイフォーンが「オープン対クローズの戦い」とされることに、ジョブズ氏は反発する。10年10月に行われた決算発表の席でジョブズ氏は、「アンドロイドはオープンでなく断片的」と評した。基本は同じアンドロイドでも、メーカーごとにOSにアレンジを加えることで「別種」となり、アプリケーションの開発者はそれぞれのアンドロイドモデルに対応するアプリをつくらなければならない。

   アプリ配信サービスもメーカーや携帯電話事業者が別々に立ち上げるため「利用者を混乱させる」と非難。端末もアプリサービスもバラバラなことを「断片的」と表現したようだ。これに対してアイフォーンは、OSもアプリ配信サービスも1種類だけと「統合的」と強調、ユーザーもアプリ開発者も迷うことはなく、利用しやすいことに自信を示した。

   だがNYTは、アップルがアプリ開発業者を厳しくコントロールしていると指摘。アプリ配信サービスが1種類しかないことで、開発者側はアップルに従うしかないとも言える。

   ただ、NYTによると、米アナリストの大半は「アップルはPCのときと同じ徹を踏むことはないだろう」と予測する。米ハーバード・ビジネススクールのデビッド・ヨフィー教授は、アイフォーンのシェアは今後縮小して25~30%で落ち着くだろうとしたうえで「それでも十分、高い利益を上げられる」と結論付けている。

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